さて、本題に戻って。
ふにゃふにゃと頼りない自尊心に喝!入れて、シャキッとさせて、頑丈になるまで育てていきたい。
今日はですね、そんなあなたに一押しの一冊が...
あります。(キリッ!)
タイトルが全てを物語ります。
以前から何度もご著書を紹介してきました、ラジオ番組のテレフォン人生相談でおなじみ、早稲田大学名誉教授・加藤諦三(かとう・たいぞう)先生。
つい最近、ようやくこの「自分を嫌うな」を手に入れました。
(行きつけの書店に注文するのがちょっと恥ずかしかったため、年末の帰国時に日本で購入...。)
いつにも増して核心をズバッと突いたキレのある言葉の連続に、「ひょっとしたらこれは先生の最高傑作なんじゃ...?」との確信は深まるばかり。
自分の過去を言い当てられたことに気付いた瞬間、息を呑み、しばし放心状態に陥る...ということも幾度と無くありました。
超・濃厚味の集中セラピーを終えて出てきたような、不思議な読後感を体験させていただきました。
前にも書いたことですが、加藤先生の本は私とは相性が良いようで、読み終えた後に他のセラピー系、心理学系の著者による本では味わえないような、特別な充実感が残るんですよ。
これ、いわゆる「カタルシス効果」ってやつですね。ずっと言いたかったけれど、言葉にするのがはばかられてしまいこんでいた心のモヤモヤを、先生が鮮やかにメッタ斬りにしてくれた、という。
いや〜、スッキリした!
まぁ、Amazonのレビュー等から見るに、加藤先生の本には熱烈な賛同者もいる一方で、どうしてもダメ、生理的に受け付けない、という方も大勢いるようです。
体質に合わせて処方しないと全然効き目が出ない漢方薬みたいなもので、合わない方にはからっきし合わない。
苦くて不快っていう後味が残るだけ。
まず、加藤先生の場合、お父様との長年の葛藤から来る恨み節(←失礼。)のようなネガティブ感情が全ての著書において通奏低音のように流れていますので、
「親と仲良し。親、大好き。」
という方には、全く合わないと思います。
悪いけど、他を当たってください。
それから、
「人間不信」
「孤立無援」
という言葉を聞いても、全くピンと来ない人。平静でいられる人。
あるいは、それがどういう状況を指しているのか、体験したことが無いからわからない、という人。
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こちらも、他へどうぞ。
「何でこんなに物の見方が暗いの〜?ひねくれてるの〜?」と、不愉快になるだけですから。
あと、
「今に見ていろ俺(私)だって」
と、ついひとりごちてしまいたくなるような、ドロドロした劣等感を生まれてこの方抱いた記憶が無い、という(ある意味しあわせな)人。
んー、こちらも他所へ行かれた方が良いかと存じます。
無理して読まずに、他にもっと共鳴できる著者に直行するのが無難でしょうね。
その方が時間もお金も有効に使えますし。
加藤諦三ワールドって、ある意味、ダークでディープでグロくてじめっとしていますよね。
昭和時代(特に戦後)が作り出してしまった闇の部分を多分に引きずっているような、そんな世界が展開されていると思います。
(無理もありません。本文中、具体例に登場する人物の大半が昭和、特に戦後の高度成長期に現役だった人々ですしね。平成生まれの若い世代なんて、ほとんど出てきませんから。出てきても、せいぜい端役・脇役止まりでしょう。)
戦後復興、その後の高度経済成長に飲み込まれ、金・金・金...の拝金主義に毒されてしまい、「人間として何が一番大切なのか」を考えないまま、もしくは考えることを上の世代や時代から禁じられたまま、ここまで来てしまった人達。そして、その歪みをもろに食らってしまった、その子供達。
昭和の負の遺産を背負った彼らがいかに病んでしまったか、どうしたらその病を克服し、少しでも生きづらさを解消して、自分なりの幸せを作っていけるか。
加藤諦三さんのお仕事は、そうした
【昭和ネガティブからの解放】
というテーマでひとくくりにできるのではないかな、と、私は考えています
ですから、読む側にもある程度の【昭和ネガティブ】に関する予備知識が必要となってきますよね。
内部に同質の、あるいは類似の、呼応する【昭和ネガティブ】な部分がある程度存在しないと、感情移入なんて
無理。
で、感情移入できなければ、「あっ、そうか!」と腑に落ちて、スッキリした〜!と満足することもないわけで。
「辛いけど、これは壁をぶち破るためにはどうしても読んでおかねばならない」という気持ちがこれっぽっちも湧かず、「ただただ読むのが苦痛」としか感じられないのであれば、きっと加藤先生とはご縁が無かったんですよ。
あなたがおかしいのでもなければ、加藤先生が悪いわけでもない。
とっとと他を当たりましょう。
2016年度・今年読んで良かった本ベスト3入りは間違い無し、と早くも確信しているこの、「自分を嫌うな」。
赤線引っ張ったところが多過ぎて、もう数えるのも面倒なくらいなのですが、せっかくですので少しだけ引用しときましょう。
まずは、先のHONYに登場した、妻子に見捨てられてしまった中年男性に真っ先に聞かせてあげたい、この言葉。
自己評価・自尊心の問題に悩む全ての方に贈ります。
心の底で自己評価の低い人間は、自分にすりよってくる人間、自分に迎合してくる人間を望む。
ところが、自己評価の高い自由な人間は、自分にすりよってくる人間を拒否する。(p.188)
確かに、男性側に「この程度なら」という認識の甘さがあったのは事実でしょう。それはご本人もよくわかっているようです。
でも、結婚20数年、子供が5人、なんて家庭の、いい年したお父さんに目をつけ、「あなたって特別」なんて甘い言葉や態度をちらつかせながら不倫関係を結んだ女性も女性、じゃありません?
まぁ、どっちもどっち...なんでしょうね。
片方だけが全面的に悪い、とは言えないはずです。
浮気に走る直前、この男性は(たとえ外からははどのように見えていようと)長年連れ添った妻との関係がうまく行っていなかったようですね。
その結果、男として、夫として愛されているという自信を失いかけていました。
自分に魅力が無いのだろうか、なんて気にしていたかもしれません。
不倫相手の女性から好意を示されたのは、そのような危うい時期だったみたいです。だからこそ、「よし!自分もまだ捨てたもんじゃないぞ!(歓喜!!!)」と、すっかりのぼせ上がってしまったんですね。
で、軽い遊びのつもりが、抜け出すタイミングを失して、ズブズブと深みにはまってしまったのでしょう。
仮に、この男性が奥さんとラブラブで、責任ある夫・父としてのプライドをしっかり持っていて、「自己評価の高い自由な人間」として地に足のついた生き方をしていたならば、
「おや、何だろう、この女。俺に気があるのかな。まぁ、嬉しくないわけではないが、でも、面倒なことになるのだけはごめんだ。うまくやり過ごすとしよう。」
...こんな感じで冷静に対処していれば、家庭崩壊という悲劇だけは避けられた...かもしれません。
次は、加藤先生の十八番的テーマですね。
「毒親」を持つ人特有の「生きづらさ」、その理由が述べられています。
「仕事における自己に対する高すぎる要求水準であろうと、人間関係に対する高すぎる要求水準であろうと、なぜそんなにまで高い要求水準が出てきたのか。
それはいうまでもなく親の高すぎる要求を内面化したからである。」(p.86)
親、特に加藤先生の言う「我執の人」タイプの親(支配過剰で、子供に自分の理想をゴリ押ししてくるような親。)との間がしっくり行かなかった、もしくは今なおしっくり行っていない、と感じている方。
そんな方でしたら、この「高すぎる要求水準」について説明は不要でしょう。
職場やママ社会など、人付き合いで、「今まで愛想良くしていた人が突然牙をむきだした」という経験したことありませんか?
どうやら、その原因は相手の「甘え」にあるようです。
「甘えた人間と、甘えていない人間が接触した時、傷つくのは必ず、甘えていないほうの人間である。
(...)甘えた者は、他人に自分の受け入れを際限なく求める。そして、自己が受け入れられないと感じた時は周囲に攻撃性を示す。
(...)結局、甘えた大人とつきあえるのは、甘えた大人だけである。」(pp. 146-147)
一見、きちんとした所のきれいな奥様風って感じの女性たちが、作り笑顔を浮かべながら褒め殺しの応酬をやっているところに出くわしたことってありません?
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あれ、要するに「私もあんたのことをこれだけほめてやってるんだから、あんたも同じ分だけ返しなさいよ」と、他人からの賞賛が無いと生きていけない、甘えタラタラ人間が複数人揃うと必ず起こる、壮絶バトルなんですね。おぉ、こわ...。
で、とある筋から「あの人、陰で悪口言ってましたよ」なんて伝え聞こうものなら、そりゃ〜もう大変。
戦闘開始まではあっという間です。
といった具合に、文庫本一冊の中にいろいろなヒントが詰まっていて、読み応え十分です。
前にも貼り付けた動画ですが、復習用にもう一回載せておきます。
加藤先生のメッセージ、ざっとまとめるとこんな感じですかね。
幸せになりたいならば、自分を嫌いにならないこと。
一気に「好き」の段階に行かなくてもいいのです。
とりあえずは「嫌いにならない」という目標を設定し、それを一生涯キープしていきましょう。
じゃぁ、自分を嫌わないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。
まずは、おのれの弱点から目を背けず、拒否せず、今ある姿のままに認め、受け入れる。
そうすれば、今まで気付かずに見過ごしていた長所や美点も自然と認められるようになっていきます。
周りの人々にあたたかく受け入れてもらいたい。
だったら、同じように自らの欠点も、美点も全て引っくるめて受け入れるのです。
自分の欠点を受け入れていない人が、人の欠点に寛容になれるはずがないでしょう。
同様に、自分の美点が見えない人は、他人の美点も見えません。
まずは、「自分を嫌うな」から始めましょう。
最後に。
この本のタイトル「自分を嫌うな」が目に入った瞬間、心の奥底がチクリと痛んだ、そこのあなた。
あなたはきっと、傷つきやすいけれど、人の痛みや苦しみがわかる人ではないでしょうか。
本当は「やさしい人として生きたい」と願っていますよね?
だったら、さっきあなたが感じた痛み、どうか「なかったこと」にだけはしないでください。
どうかあなた自身にもそのやさしさを向けてあげてください。
無視したからと言って、傷ついた部分は自然消滅なんてしないんです。
痛みがあるのなら、きちんと向き合って、対話して、その正体を明るみにしていかないと。
さもないと、どんどん肥大化し、醜い姿へと変わり、都合の悪い時に戻ってきては存在をうるさく主張し始めるようになりますよ。
そうなる前に、どうにかしたいものですね。
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