あ~あ。また、ですかい...。
前回の記事で取り上げました、世界的スピリチュアル・ティーチャー エックハルト・トール氏。(以下、E.T.氏と略しますね。)
「ニュー・アース」を読み始めた頃の時期の軽い興奮もすっかり冷め、最近では「Present moment…present moment,.... Being in the Now… Being in the Now...」ばかりの繰り返しに食傷気味。おかげで、少し突き放して見るだけの余裕が生まれましてね。
で、
「うーん。この程度の『教え』を、最終目的地とみなすわけにはいかないなぁ。人としてこう生きるべし、っていう、倫理的な要素も無いし。単なるマインド・ゲームと変わらない程度のものを『教え』(teaching)と呼ぶのは、ちょっと、ね...。
あくまでも箸休めの一品小鉢、って感じ。とてもメインのおかずとして扱う気にはなれない。」
との結論に到達しました。
そうして書いたのが前回記事「道の駅。でも最終目的地ではない。」です。
確かにどの本もそれなりにいいことは言ってはいるんですよ。
字面だけ追う分には人畜無害、後味はそれ程悪くないです。
でもね、よく読んでみると、その言葉のほとんどは禅仏教の僧侶たちや、イエス・キリストや、ブッダ、「奇跡のコース(A Course in Miracles)」のようなチャネリング本、
ヘレン・シャックマン
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それからJ.クリシュナムルティ
J. クリシュナムルティ
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(↑とあるブロガーさんのお勧めだった一冊。若い人たちからの質問に答えるという形式が、私のような初心者にはぴったりでした。難易度もちょうど良し。
寝る前に読むと、妙に落ち着くんですよ。)
ラマナ・マハルシ
(未読なのですが、マハルシの教えとE.T.氏との親近性を指摘する人は多いようです。)
といった近現代のインドが生んだ賢人など、既に評価の定まった人々(←「人」じゃない方もいますが...。)の著書から発せられたもの。
元ネタが良いとすれば、それらをふんだんに散りばめた彼の本の読後感がすこぶる良くなるのは、まぁ、当然でしょう。
E.T.氏、アンソロジー(撰文集)作者としてはなかなかいい仕事していると思います。
私が彼の著作に惹きつけられたのも、「アンソロジー」として「ニュー・アース」がとても魅力的だったから。
そして、「ペインボディ」という概念が新鮮だったから。この二つが主な理由です。
ただ、一つどうしても納得行かない部分がありました。
E.T.氏が著書中で用いる逸話や書物からの引用の出典をほとんど明らかにしないこと。
あたかも、自分オリジナルのエピソードであるかのように、しれーっと紹介して、出処を明らかにしないこと。
これは鎌倉仏教、特に禅宗にゆかりの深いお寺を数多く擁するわが故郷・神奈川県をこよなく愛する一人の日本人として、看過するわけにいきません。
「引用の出典を明らかにしない」というE.T.氏の困ったクセについては、既に多くの人が指摘しています。
私も、最初に紙の本(英語版)を手に入れた時、巻末の注を見ながら、
「あれー?聖書以外にも、禅仏教とか、インド人著者の本とか、もっと色々な本から引っ張ってきているはずなのに、どの本が出所か、書いてない。おっかしーなー。」と感じましたね。
注のほとんどは、新・旧約を合わせた聖書からの引用を示すもの。
後は、シェークスピア、ニーチェ、エマソンといった、「大御所」的な人々の作品名がちらほら。
圧倒的に西洋人寄りです。
「ニュー・アース」をお読みになった方ならご記憶かと思います。
禅宗を初めとした仏教関係者(老僧と弟子、とか。)絡みのエピソード、ここかしこに使われていますよね?
例えば、「ペインボディ」の章(第5章)。
若い娘さんを担いでぬかるみを無事に渡してやった僧・担さが、5時間経った後で同行していた友人から「どうしてあなたはあんなことをしたのか?」と聞かれ、「おや、まだあなたはあの娘のことを考えていたのかい。」と答える部分、章の肝心カナメ、と言っても良い部分です。
数えてみました。
全部で33個ある巻末の「注」(どの本から引っ張ってきたか、元ネタの場所を示す記述)のうち、禅や仏教を扱った本の書名記載は、なんと、ゼロです。
皆無。
とにかく、東洋系の本に対しての扱いがひどいです。たった4冊しか書名が引かれていないんですよ。4冊のみ。
老子の「道徳経」を出典とするところが2箇所。それから、ヒンドゥー教の古典のひとつ・「ケーナ・ウパニシャッド」 、残るもう一箇所は14世紀ペルシアの詩人・ハーフェズ の作品集・"The Gift"。
嶋本 隆光
京都大学学術出版会
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インド方面からも、やはり不満の声が上がっています。
"Hinduism Today"誌・「なぜヒンドゥー教はいつも貧乏くじばかりなの?」
In the Church of Oprah...Why does Hinduism get the short end of the stick?
日本人の私が「ちゃんと禅や仏教から引用したって書きなよ!」とプンスカしているのと同じで、インドが誇る諸聖人・賢人の業績をちゃんと認めるべき!と、ご立腹のようです。明らかに印象操作、してますね。E.T.氏は。
いかにも「聖書使ってるよ!バイブルの教えに従ってるよ!!!」と、フレンドリーな顔して、アメリカ人のお茶の間にズカズカと入り込む。
オプラ・ウィンフリーの番組で大々的に取り上げてもらうからには、敬虔なアメリカ人キリスト教徒の善男善女に難なく受け入れてもらわないと行けません。
東洋思想ばかり引用するような著者では、やはりまずいわけですよ。基本的にアメリカは保守的なキリスト教徒が支配する国なので。特に、田舎。
元ネタが異教徒発&異文化発ばかり、って感じの本にするわけにはいかなかったのです。
でないと、せっかくつかみかけた巨大なビジネスチャンスもパーになってしまう。
数年前、「引き寄せの法則」でお馴染み・「エイブラハム」というエスター・ヒックスおばさん(監督&脚本:彼女の配偶者であった、故・ジェリー・ヒックス)のイタコワンマン「霊言」ショーにまんまと引っ掛かり、各種商品を買い漁り、YouTubeビデオを片っ端から見まくった...いう暗い過去の持ち主である私。
(詳しくはこちらをご参照ください。)
「もしかして、今回も、また...???」という嫌な予感と闘いながらも、この週末、件のE.T.氏についての世間での評判を徹底的に調べてみることにしました。
やっぱりそうでした。
...あーあ。またやっちゃったよ。
またしても、私は「大量生産&大量消費」の国・アメリカが誇る一大輸出産業
McSpirituality
【マックスピリチュアリティ】
(...もちろん、皆さんご存知の、あのファストフードチェーン店に引っ掛けてるんですよ!)
が得意とする、巧妙かつ効き目抜群のマーケティング戦略、および集団催眠術(要するに、洗脳/マインドコントロール。)に見事、引っ掛かってしまっていたのでした。
![]() |
「禅」のツラした「禅もどき」に当たると、胃袋の代わりに脳味噌にじわじわ来ますよ。 |
そう。催眠術だったんですよ、催眠術。
私も、あなたも、それから全世界のE.T.読者も、集団催眠の術にまんまとかけられていたようなのです。
特にYouTubeの動画をたくさんみてしまった、そこのあなた。
(←あ、私、ほとんど見てません。だって、おもしろくないんですもん。本に書かれたことのリピートばかりですし。)
以下、あまり詳しくないので深くは立ち入りませんが...。
「E.T.は、NLP(神経言語プログラミング)
、特にミルトン・エリクソンの催眠技法を使っている。それも、かなり巧みに。」といった主張も、個人のブログや掲示板にていくつか散見されました。以下はその代表的な例。
http://grassrootsnlp.com/blog/4/nlp-language-patterns-eckhart-tolle
http://dharmawheel.net/viewtopic.php?f=63&t=15022#p204618
【参考:NLPラーニング 「エリクソニアン催眠特別セミナー」紹介文より引用。http://www.nlplearning.jp/seminar_event/erickson_s.html
「エリクソンはセラピーの中でいつでも催眠を使っていたわけではありませんが、
彼の催眠手法はそれまでの伝統的催眠とは随分と趣の異なるものでした。
いわゆる間接的アプローチと言われるもので、普通に会話をしながら
いつのまにかクライアントを催眠状態(トランス状態)に誘導したり、
意表をつくようなやり方であっという間にトランスに入れてしまうものでした。」】
こちらのGunther Weilという心理学者であり、人事コンサルタントでもある人物。ページの一番下にある記述に注目しましょう。「2001年、ベストセラー”The Power of Now"の著者・E.T.に招かれ…【今ここにある(Presence)】の実践を教える。」とあります。
http://valuementors.com/about-us-2/gunther-weil/
NLPマスターと名乗るこの方が得意とするのは、ミルトン・エリクソンの催眠技法のようです。オンライン版・エリクソニアン催眠情報ポータルサイトの執筆者の一人として、一番下の方に名前が見つかりますね。
はは~ん。どうやらこの方が指南役のようです。E.T.氏はこの方から直々に集団催眠のテクニックを学んだのですね。
悪用厳禁...って。そう書けば必ず悪用する人が出ますよね(笑)。ついクリックしたくなる動画です。うまい。
そして、こちらの掲示板。
以前は「ロス研究所(Ross Institute of New Jersey) 」の呼称で知られたCult Education Institute。
その名の通り、カルト宗教に関するあらゆる問題(啓蒙活動、被害者の救済、家族からの相談、脱会者へのカウンセリング等...)を取り扱う、非営利団体です。
エイブラハムの時もそうだったんですが、「ちょっとでも怪しいと思ったら、ここを探れ!」という良心の声(?)に促され、週末、じっくりとこちらの掲示板に目を通してみました。
ありました、ありました。
「ザ・お仕事(直訳。←なんだかダ〇ソーの商品に付いたラベルみたい。)」と呼ばれる一種のセラピーメソッドで知られる女性著者・B.K.とひとまとめにされて色々突っ込まれています。超・長大なスレッドです。
http://forum.culteducation.com/read.php?12,12906,page=1
全部(2014年4月末現在で287ページ分)は読めませんでしたけどね。さすがにそこまでは暇じゃないっす。
「認識の自殺」というぶっそうなタイトルの下、”The Power of Now”の矛盾点やE.T.氏の「教え」の欠陥を指摘し合うスレッド。全24ページ。
http://forum.culteducation.com/read.php?12,7166,page=1
極めつけは何と言ってもこれでしょう。
イギリス時代の彼を個人的に知っているという、「元・友人」の女性が掲示板に登場したのです。
この方の話が本当だとすれば、E.T.氏の人物形成・思想形成を知る上での大きなヒントとなりますね。
長大なスレッドの中に埋もれそうになっていたのを危惧した一投稿者が、別スレッドとして独立させました。
http://forum.culteducation.com/read.php?12,73107,83276#msg-83276
信じる・信じないは、読者の皆様のご判断にゆだねます。
こういう「暴露話」を嫌う方が大勢いることはわかります。
確かに、匿名掲示板でこのような知人の過去をぶちまける、というのは、かなりの「悪趣味」なのかもしれません。
ただ、私自身は全てのやり取りを読み終えても、この「元・友人」さんにそれ程悪い印象は抱きませんでした。(←そういうお前が下世話な奴だからだ、と言われれば、まぁ、それは否定できませんね。うん。)
というのも、かねてよりE.T.氏とその「パートナー」である女性の間柄に関しては、私もどこか違和感(=単なるビザ/永住権のための「偽装結婚」カップルのような雰囲気、とでもいいましょうかねぇ。)を感じていましたので、この「元・友人」さんの話はある程度真実だろうな、と、いう気がするんですよ。
100%真実ではないとしても、ある程度は。
E.T.氏の場合、「Eckhart Teaching」という商標名で持って自分を「ブランド化」し、動画配信やグッズの販売(笑)を行うなど、その活動やビジネスの規模は「単なる一般市民」を超え、半ば公人といっても良いほど。
このように影響力、特に人の精神生活/霊的生活に影響力を及ぼす人物の場合、「どこからネタを仕入れてきたか」「客から金取って販売している"教え"がパクリではないかどうか」といった情報は、消費者にもある程度は開示されてしかるべきではないでしょうか。
私たちの口に入る食べ物の産地偽装がまずい、というのと同じで、私たちの心や頭に入る霊的な教えの「産地偽装」もやはり好ましいものではない。
私は、そう思います。
興味ある方のために、コメント欄に小分けにして原文(英語)と和訳の両方をアップしていきますね。明日以降になりますが。
E.T.氏のファンの方で、彼のイメージを崩したくない、下世話な暴露話を読むなんて、負のカルマを積むようなこと(...。)はしたくない、とおっしゃるのであれば、どうぞ、お読みにならないでください。
あ~あ。
完全に、「デジャヴュ (déjà-vu)」ですよね。これ。3年前の「エイブラハム」から目が覚めた時と全く同じ展開だなんて。ううむ。
またもや、アホやってしまいました。あまり進歩していない自分にトホホホ...です。
(ま、金額的な損失は今回、せいぜ$25程度、と軽微なのが幸いでした。充実した地元の図書館と、激安古本が手に入るチャリティーショップのおかげですよ。)
McSpirituality
(ファストフード・スピリチュアリティ)。
安く、早く、手軽に買えちゃう、っていう物にすぐ釣られたりするな、ってことですね。
「さわるな! 危険!!!」とでも、でっかく赤字で書いておきましょうか。
「全米ベストセラー!」「オプラ・ウィンフリーが番組中で取り上げ!」
なんて枕詞が付いたら、その本/著者の言うことはいつもの三倍は疑ってかかれ、ってことなのかもしれません。
「これを買え!これを信じろ!」
...集団催眠かけられて、ポワワ~ンといい気分にさせられたって、いいこと一つもありません。
今回のE.T.氏のように、"Don't think."的な、独裁的な支配者層がいかにも好みそうなメッセージ、気をつけないとすぐに毒されますよ。
テレビ消して、ブラウザも閉じて、電波の届かないところへと逃げた方がいいのです。そして、自分の頭をしっかり働かせないと。
でないと、一方的に洗脳されて、後で悔やむ羽目になりますよ。
日本のマスコミや某大手広告代理店が好むと巷では噂の、「ゴ リ 押 し」大作戦。
まさか、アメリカでも全く同じことが、それもお人よしが多そうなスピリチュアル好きな人々への猛プッシュという形で、静かに、でも、大規模(世界規模!)に行われていただなんて。
まぁ、日本は流行でも何でも、必ずアメリカの一歩後を追いかけていますしね。
そのうち似たような現象が起こるかもしれません。
いや、もしかしたら既に起こっているかも。
くわばら、くわばら。
精神世界・宗教に関しては、
「故人となった著者の作品しか読まない」
「イマドキの人には、深入りしない。関わりを持たない。」
といったマイルール作って、守り通した方がいいのかもしれません。
...本物の「禅」と、ニセモノである「禅もどき」。
その違いがわかるようになるまでは、やはり地道に勉強するしかないでしょう。
頭と、心と、両方をフル稼働させながら。
歴史の淘汰を経て、なおも多くの人々から尊ばれているような「本物の教え」に直接当たってみる。
そこから、自分なりに何らかの真実をつかもうと、七転八倒してみる。
本気でぶつからなくっちゃいけません。
「本物」にじかに触れて、「本物」にしか出せない良質のパワーを見分けられるようになること。
「禅もどき」を見破るには、そういう長くてしんどくて遠い道のりを歩むしかないのだ、と思います。
受身で頭真っ白にして、ただ待ってるだけでは何も変わりません。
(「がんもどき」なら美味しく食べられるけど、「禅もどき」は煮ても焼いても食えないんだよ~。)
(さすがに道元禅師の「正法眼蔵」は少々手ごわいので、まずはこちらの鎌田先生の丁寧な解説書から。)
「生きている人間などというものは、どうも仕方のない代物だな。
何を考へているのやら、何を言い出すのやら、
仕出来(しでか)すのやら、自分の事にせよ、他人(ひと)事にせよ、
解った例(ため)しがあったのか。
鑑賞にも観察にも堪えない。
其処に行くと死んでしまった人間というものは大したものだ。
何故、ああはっきりとしっかりとして来るんだろう。
まさに人間の形をしているよ。
してみると、生きている人間とは人間になりつつある一種の動物かな」
(「無常という事」小林秀雄 こちら↓の本、p.69より引用。)