https://www.youtube.com/watch?v=5zu6ZlWFGUM |
(ノリさんの見合い相手は元・ミス・ユニバース日本代表の、あの方♪)
仕事場では失敗の連続で叱られてばかり。
パート女性の輪にも入っていけず、貴子は一人落ち込むばかりの毎日でした。
息子の祐希や、客として精肉店を訪れ、知り合いとなった早苗(ノリさんの娘)の優しさが身にしみます。
それでも、元々高くなかった彼女の自尊感情(=ありのままの自分にYes!と言えるココロ、ですね)を、プラスへと転じることはできませんでした。
音大生だった貴子は、キヨさんの息子・健児との間に予定外(笑)に子供を授かり(それが現在高校3年生?の祐希。)、止む無く学生結婚。(だからまだ38歳という若いお母さんなんですね。なるほど。)
以後、「いつかピアノ教室を開きたい」との夢を抱きつつ、専業主婦のままずっとこの年齢まで来てしまいました。
若さ。
男性に好まれる、可愛らしい外見。
エリート銀行員のだんな様。
イケメン高校生の息子。
都内二十三区内の、広い土地付一戸建て・持ち家住まい ⇨⇨⇨ 将来、確実に転がり込んで来る、親からの資産。
周りの「ちょい不幸せ気味」な中年女性達から嫉妬される材料ばかり、です。
パート女性達があそこまで悪口で盛り上がったのも、そうした貴子の「外側から見える幸せ」への妬みゆえでしょう。
居酒屋での場面。
「清田さん、ダンナの親が死んだら遺産が...」なんて話聞いたら、そりゃ不愉快になるわ。 |
「あの人が妬ましい」と認めてしまうと、自分たちのミジメな現状にも気付かざるを得ない。
でも、それはあまりにも辛すぎる。やりたくない。
ならば、同じようなミジメ者同士一致団結し、恵まれ過ぎている人・貴子を仮想敵とみなし、こき下ろせば良い。
「自分達は時給分の仕事をまともにこなす、優秀な従業員だ。それに引き換えあいつは...」
自分達が上だ。と確認し合えば、しばしの間、おのれのミジメさを忘れられる...。
かつて「使えない新人」と呼ばれた時代が自分達にもあったかもしれないのに...。
その場にいない人の陰口や噂話。決してほめられたものではありません。
でも、職場によっては「ガス抜き」としての機能を果たしてくれるため、100%の根絶が難しい場合もあるのでしょう。
必要悪、っていう奴ですね。
一方、悪口には参加せず、「またとないカモ」として早くから貴子に注目していた【トモダチ詐欺師】の育代。
彼女は、外側に表れた幸せな若奥様、ではない、もう一人の貴子も観察していました。
捕食者ならではの鋭い観察眼でもって、貴子の内面を蝕む負の感情をも見透かしていたのです。
「外で働いたこともない、世間知らず。」(自己評価、マイナス50点!)
「ドンくさい。仕事がのろい。」(同じく、-20点!)
「しょっちゅう失敗しては皆に迷惑かけっ放し。」(同上!)
「みんなの輪に入りたいのに、それができない。」(-10点!)
他人がどう思おうが、貴子自身にとっての自画像は
【自己評価・マイナス100点(しかも改善の兆し全く見えず)の、ダメな奴】でしかありませんでした。
(結末部分では、その【貴子=ダメな奴】オーラに清田家の全員が同調し、ますます強化する、という悪循環に、なんとキヨさん自身も巻き込まれていた、という事実が、克恵さんの言葉で明らかになります。
家族から「ダメな奴」と思い込まれているようでは、「私、これでいいんだ!」という自尊感情が育たないのも当然でしょう。)
貴子が放つ【ダメな奴オーラ】に気付きつつも、せいぜいストレス解消のサンドバッグとして使っちゃおう、というレベルで止まっていたのが、他のパート女性達。
それに対し、育代は「こいつを弄(もてあそ)んで、甘い汁吸ってやるか。」と、ブラックな企みを実行に移してしまいます。
「サイコパスはふつうの人より刺激にたいする欲求が強く、
結果として社会的、肉体的、経済的、あるいは法的にリスクを冒すことが多くなる。
特徴をあげると、彼らは人を惑わせて危険な冒険に引きずりこむ。
共通して病的に嘘をつき、人をだます。
あるいは”友人”に寄生虫のように寄りかかる。
(...中略...)
そしてつねに、いかなる問題にたいしても
責任を感じない点は共通している。」
(「良心をもたない人たち」マーサ・スタウト著、木村博江 訳、草思社文庫、2012年、p.17)
https://www.youtube.com/watch?v=qeJyCW_uG1U |
育代はまさにこの「病的な嘘つき」でした。
どんな嘘つきも、最初っから「特大級の嘘」をぶつけてくることは稀です。
カモさんの警戒心の強さを確かめる意味もあって、まずは小さな嘘から出してくるんですよ。
そこではっと気付くことができれば、被害は最小限にとどめられるんですがね。
残念ながら、こうした海千山千的人間にあまり免疫が無いお人よしの貴子。
長年、温かな家族に守られてきたことへの代償として、人生経験が不足してしまったことは否めません。
育代の言葉をバカ正直に受け取ることしかできない貴子は、さらに大きな嘘へと巻き込まれていきます。
「お茶しよう」と自分から誘う。
ドーナツ屋のレジで会計、という段になって「あ、大きいのしかないや。次、必ず返すから」。
平然と育代は嘘をつきます。
次のお茶の時も、「大きいのしかない」の嘘。
再度払う、貴子。
またその次のお茶でも、「大きいの...」の嘘。
性懲りもなく、また払ったそうです。
職場が一緒なのですから、借りたお茶代を返す機会なんていくらでもあるはずなのに、おかしいですよね。
そう。「おかしい」に目をつぶってはいけなかったんです。
「いい人」をやめる覚悟を決めて、
キッパリと相手のおかしな言動を
問い正すべきだったんです。
さっさと逃げるべきだったんです。
さてさて。
貴子が貸した金を請求して来ない。つまり、「いい人」イメージを捨てるだけの度胸が貴子に無い、と確定できた今、育代は「お試しモード」からいよいよ「本気の詐欺モード」へとギアチェンジします。
そして給料日。
お嬢さん育ちの貴子が「自分の力で初めてもらったお給料」です。それはもう、特別なお金に違いありません。
あまりの嬉しさに、思わず家族全員にケーキを買って帰った程でした。
気分高揚中♪につき、ただでさえゆるゆる~のガードが一段と緩くなっている貴子を、天性の捕食動物・育代が見逃すはずがありません。
5万円貸して、あなたしか頼れないから...と、頼み込むんですよ。
その理由がこれまたふるってましてね。
磁気ネックレス買っちゃった,ですって(笑)。
チラッと襟元から出したその品、どう見積もっても数千円以下...。
「お願い。5万円貸して。次のお給料で必ず返すから。
旦那に言えない買い物しちゃったの。
代金払わないと明日取立てに来る、っていうの。
もうクーリングオフできないって。旦那にばれたら殴られちゃう...。」
もう、この言い訳ひとつに含まれる要素だけで「三振バッターアウト!」でいいですよね?
距離を置きたくなりません?
へそくりで払えないとわかっていて、高額商品を買う。
しかも、支払いをズルズルと引き延ばし、取立て寸前。
で、極め付けが「ばれたら殴る」ような旦那がいて、事を治めるためには他人を巻き込んでも構わない、と思っている。
そう。聞いた瞬間に浮かぶ、「ん!?」「何それっ!?」「あらぁ~???」の、「?」=違和感。それをすぐに打ち消さない、無視しないことが非常に大切です。
あなたが感じる違和感。それは相手が「今、嘘をついた。」という、直観からの警告サインかもしれません。
「どんな種類の関係であれ、新たなつきあいがはじまったときは、
相手の言葉、約束、責任について『三回の原則』をあてはめてみること。
一回の嘘、一回の約束不履行、一回の責任逃れは、
誤解ということもありえる。
二回つづいたら、かなりまずい相手かもしれない。
だが、三回嘘が重なったら嘘つきの証拠であり、
嘘は良心を欠いた行動のかなめだ。
つらくても傷の浅いうちに、
できるだけ早く逃げだしたほうがいい。」
(同書、pp.210-211)
ドーナツ代金踏み倒し。
加えて、よくもまぁ、毎回飽きずに...と呆れる程に次元の低い、パートの上司・克恵への中傷。
そうそう。昔、運転免許の取得に失敗した、と貴子が漏らしたことに対し、
「若い頃からちょっとどんくさかったのね~」
と、さりげなく、でも失礼極まりない顔面パンチを食らわしてきた、っていう場面もありました。
「庶民派ぶっちゃけ系キャラ」を前面に出しながらも、実は単にガサツで口の悪い、イヤな奴。
視聴者にもはっきりと伝わりました。
うまいです。この描き方。
あーあ。貴子がマーサ・スタウトさんの「三回の原則」を知っていたらなぁ...。
「三回違和感アウト→逃げろ!」のオキテに従って、育代との「お茶」を数回程度で打ち切りにしていたら、「5万円貸して」なんて大きな話に発展することも無かったでしょうに。
渋々5万円を渡してしまった貴子。
誰もが予想した通り、育代はその直後に精肉店でのパートを突然辞め、姿を消します。
大切な初給料を取り戻すべく、店長から育代の住所を聞きだし、「5万円返して」と育代に直接詰め寄ったものの、貴子を待ち受けていたのはとんでもない「逆切れ」反応でした。
「あなたがもっと前に『返して』と言わなかったから。
あなたが金にルーズだったから、こうなった。
それに何よ、家まで押しかけてきて!」
「盗人猛々しい」って、こういう時に使います。
一見、魅力的だが、
うそをついて人をあやつり、
空涙をながして同情をひき、
追いつめられると逆ギレする。
文庫版「良心をもたない人たち」の帯に付けられたキャッチコピーです。
どこかの誰かに当てはまりそうな一節ですね。
幸い、ドラマは勧善懲悪モノのセオリー通りに進行。
最後は正義が勝つ!チャンチャン♪で、爽やかに終わります。フィクションですから。
ま、まさかの【女神降臨】! |
そうでもなけりゃ、とてもやりきれませんよ。
嘘つきが高笑いをしている陰で、正直者が泣きを見るような世界。
悲しいかな、私たち人類は未だにそのような世界から卒業できていないんです。
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