2014/04/29

Oops! またやっちゃったよ、ブリトニー。



あ~あ。また、ですかい...。


前回の記事で取り上げました、世界的スピリチュアル・ティーチャー エックハルト・トール氏。(以下、E.T.氏と略しますね。)
「ニュー・アース」を読み始めた頃の時期の軽い興奮もすっかり冷め、最近では「Present moment…present moment,.... Being in the Now… Being in the Now...」ばかりの繰り返しに食傷気味。おかげで、少し突き放して見るだけの余裕が生まれましてね。


で、
「うーん。この程度の『教え』を、最終目的地とみなすわけにはいかないなぁ。人としてこう生きるべし、っていう、倫理的な要素も無いし。単なるマインド・ゲームと変わらない程度のものを『教え』(teaching)と呼ぶのは、ちょっと、ね...。
あくまでも箸休めの一品小鉢、って感じ。とてもメインのおかずとして扱う気にはなれない。」
との結論に到達しました。


そうして書いたのが前回記事「道の駅。でも最終目的地ではない。」です。



確かにどの本もそれなりにいいことは言ってはいるんですよ。
字面だけ追う分には人畜無害、後味はそれ程悪くないです。
でもね、よく読んでみると、その言葉のほとんどは禅仏教の僧侶たちや、イエス・キリストや、ブッダ、「奇跡のコース(A Course in Miracles)」のようなチャネリング本、


奇跡のコース 第1巻/テキスト ―A COURSE IN MIRACLES Vol.1/TEXT―
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それからJ.クリシュナムルティ


子供たちとの対話―考えてごらん (mind books)
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(↑とあるブロガーさんのお勧めだった一冊。若い人たちからの質問に答えるという形式が、私のような初心者にはぴったりでした。難易度もちょうど良し。
寝る前に読むと、妙に落ち着くんですよ。)



ラマナ・マハルシ

あるがままに―ラマナ・マハルシの教え

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(未読なのですが、マハルシの教えとE.T.氏との親近性を指摘する人は多いようです。)



といった近現代のインドが生んだ賢人など、既に評価の定まった人々(←「人」じゃない方もいますが...。)の著書から発せられたもの。
元ネタが良いとすれば、それらをふんだんに散りばめた彼の本の読後感がすこぶる良くなるのは、まぁ、当然でしょう。
E.T.氏、アンソロジー(撰文集)作者としてはなかなかいい仕事していると思います。
私が彼の著作に惹きつけられたのも、「アンソロジー」として「ニュー・アース」がとても魅力的だったから。
そして、「ペインボディ」という概念が新鮮だったから。この二つが主な理由です。


ただ、一つどうしても納得行かない部分がありました。
E.T.氏が著書中で用いる逸話や書物からの引用の出典をほとんど明らかにしないこと。
あたかも、自分オリジナルのエピソードであるかのように、しれーっと紹介して、出処を明らかにしないこと。
これは鎌倉仏教、特に禅宗にゆかりの深いお寺を数多く擁するわが故郷・神奈川県をこよなく愛する一人の日本人として、看過するわけにいきません。



「引用の出典を明らかにしない」というE.T.氏の困ったクセについては、既に多くの人が指摘しています。
私も、最初に紙の本(英語版)を手に入れた時、巻末の注を見ながら、
「あれー?聖書以外にも、禅仏教とか、インド人著者の本とか、もっと色々な本から引っ張ってきているはずなのに、どの本が出所か、書いてない。おっかしーなー。」と感じましたね。
注のほとんどは、新・旧約を合わせた聖書からの引用を示すもの。
後は、シェークスピア、ニーチェ、エマソンといった、「大御所」的な人々の作品名がちらほら。
圧倒的に西洋人寄りです。



「ニュー・アース」をお読みになった方ならご記憶かと思います。
禅宗を初めとした仏教関係者(老僧と弟子、とか。)絡みのエピソード、ここかしこに使われていますよね?
例えば、「ペインボディ」の章(第5章)。
若い娘さんを担いでぬかるみを無事に渡してやった僧・担さが、5時間経った後で同行していた友人から「どうしてあなたはあんなことをしたのか?」と聞かれ、「おや、まだあなたはあの娘のことを考えていたのかい。」と答える部分、章の肝心カナメ、と言っても良い部分です。



数えてみました。
全部で33個ある巻末の「注」(どの本から引っ張ってきたか、元ネタの場所を示す記述)のうち、禅や仏教を扱った本の書名記載は、なんと、ゼロです。
皆無。
とにかく、東洋系の本に対しての扱いがひどいです。たった4冊しか書名が引かれていないんですよ。4冊のみ。
老子の「道徳経」を出典とするところが2箇所。それから、ヒンドゥー教の古典のひとつ・「ケーナ・ウパニシャッド」 、残るもう一箇所は14世紀ペルシアの詩人・ハーフェズ の作品集・"The Gift"。


イスラームの神秘主義: ハーフェズの智慧 (学術選書)
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京都大学学術出版会
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インド方面からも、やはり不満の声が上がっています。
"Hinduism Today"誌・「なぜヒンドゥー教はいつも貧乏くじばかりなの?」

In the Church of Oprah...Why does Hinduism get the short end of the stick?

日本人の私が「ちゃんと禅や仏教から引用したって書きなよ!」とプンスカしているのと同じで、インドが誇る諸聖人・賢人の業績をちゃんと認めるべき!と、ご立腹のようです。



明らかに印象操作、してますね。E.T.氏は。
いかにも「聖書使ってるよ!バイブルの教えに従ってるよ!!!」と、フレンドリーな顔して、アメリカ人のお茶の間にズカズカと入り込む。
オプラ・ウィンフリーの番組で大々的に取り上げてもらうからには、敬虔なアメリカ人キリスト教徒の善男善女に難なく受け入れてもらわないと行けません。
東洋思想ばかり引用するような著者では、やはりまずいわけですよ。基本的にアメリカは保守的なキリスト教徒が支配する国なので。特に、田舎。
元ネタが異教徒発&異文化発ばかり、って感じの本にするわけにはいかなかったのです。
でないと、せっかくつかみかけた巨大なビジネスチャンスもパーになってしまう。




数年前、「引き寄せの法則」でお馴染み・「エイブラハム」というエスター・ヒックスおばさん(監督&脚本:彼女の配偶者であった、故・ジェリー・ヒックス)のイタコワンマン「霊言」ショーにまんまと引っ掛かり、各種商品を買い漁り、YouTubeビデオを片っ端から見まくった...いう暗い過去の持ち主である私。
(詳しくはこちらをご参照ください。)



「もしかして、今回も、また...???」という嫌な予感と闘いながらも、この週末、件のE.T.氏についての世間での評判を徹底的に調べてみることにしました。



やっぱりそうでした。
...あーあ。またやっちゃったよ。



またしても、私は「大量生産&大量消費」の国・アメリカが誇る一大輸出産業


McSpirituality




【マックスピリチュアリティ】
(...もちろん、皆さんご存知の、あのファストフードチェーン店に引っ掛けてるんですよ!)



が得意とする、巧妙かつ効き目抜群のマーケティング戦略、および集団催眠術(要するに、洗脳/マインドコントロール。)に見事、引っ掛かってしまっていたのでした。

「禅」のツラした「禅もどき」に当たると、胃袋の代わりに脳味噌にじわじわ来ますよ。



そう。催眠術だったんですよ、催眠術。
私も、あなたも、それから全世界のE.T.読者も、集団催眠の術にまんまとかけられていたようなのです。
特にYouTubeの動画をたくさんみてしまった、そこのあなた。
(←あ、私、ほとんど見てません。だって、おもしろくないんですもん。本に書かれたことのリピートばかりですし。)



以下、あまり詳しくないので深くは立ち入りませんが...。
「E.T.は、NLP(神経言語プログラミング)
、特にミルトン・エリクソンの催眠技法を使っている。それも、かなり巧みに。」といった主張も、個人のブログや掲示板にていくつか散見されました。以下はその代表的な例。



http://grassrootsnlp.com/blog/4/nlp-language-patterns-eckhart-tolle

http://dharmawheel.net/viewtopic.php?f=63&t=15022#p204618



【参考:NLPラーニング 「エリクソニアン催眠特別セミナー」紹介文より引用。http://www.nlplearning.jp/seminar_event/erickson_s.html


「エリクソンはセラピーの中でいつでも催眠を使っていたわけではありませんが、
彼の催眠手法はそれまでの伝統的催眠とは随分と趣の異なるものでした。
いわゆる間接的アプローチと言われるもので、普通に会話をしながら
いつのまにかクライアントを催眠状態(トランス状態)に誘導したり、
意表をつくようなやり方であっという間にトランスに入れてしまうものでした。」】



こちらのGunther Weilという心理学者であり、人事コンサルタントでもある人物。ページの一番下にある記述に注目しましょう。「2001年、ベストセラー”The Power of Now"の著者・E.T.に招かれ…【今ここにある(Presence)】の実践を教える。」とあります。


http://valuementors.com/about-us-2/gunther-weil/



NLPマスターと名乗るこの方が得意とするのは、ミルトン・エリクソンの催眠技法のようです。オンライン版・エリクソニアン催眠情報ポータルサイトの執筆者の一人として、一番下の方に名前が見つかりますね。
はは~ん。どうやらこの方が指南役のようです。E.T.氏はこの方から直々に集団催眠のテクニックを学んだのですね。





悪用厳禁...って。そう書けば必ず悪用する人が出ますよね(笑)。ついクリックしたくなる動画です。うまい。


そして、こちらの掲示板。



以前は「ロス研究所(Ross Institute of New Jersey) 」の呼称で知られたCult Education Institute。
その名の通り、カルト宗教に関するあらゆる問題(啓蒙活動、被害者の救済、家族からの相談、脱会者へのカウンセリング等...)を取り扱う、非営利団体です。


エイブラハムの時もそうだったんですが、「ちょっとでも怪しいと思ったら、ここを探れ!」という良心の声(?)に促され、週末、じっくりとこちらの掲示板に目を通してみました。



ありました、ありました。
「ザ・お仕事(直訳。←なんだかダ〇ソーの商品に付いたラベルみたい。)」と呼ばれる一種のセラピーメソッドで知られる女性著者・B.K.とひとまとめにされて色々突っ込まれています。超・長大なスレッドです。


http://forum.culteducation.com/read.php?12,12906,page=1

全部(2014年4月末現在で287ページ分)は読めませんでしたけどね。さすがにそこまでは暇じゃないっす。



「認識の自殺」というぶっそうなタイトルの下、”The Power of Now”の矛盾点やE.T.氏の「教え」の欠陥を指摘し合うスレッド。全24ページ。

http://forum.culteducation.com/read.php?12,7166,page=1



極めつけは何と言ってもこれでしょう。
イギリス時代の彼を個人的に知っているという、「元・友人」の女性が掲示板に登場したのです。
この方の話が本当だとすれば、E.T.氏の人物形成・思想形成を知る上での大きなヒントとなりますね。
長大なスレッドの中に埋もれそうになっていたのを危惧した一投稿者が、別スレッドとして独立させました。


http://forum.culteducation.com/read.php?12,73107,83276#msg-83276



信じる・信じないは、読者の皆様のご判断にゆだねます。



こういう「暴露話」を嫌う方が大勢いることはわかります。
確かに、匿名掲示板でこのような知人の過去をぶちまける、というのは、かなりの「悪趣味」なのかもしれません。
ただ、私自身は全てのやり取りを読み終えても、この「元・友人」さんにそれ程悪い印象は抱きませんでした。(←そういうお前が下世話な奴だからだ、と言われれば、まぁ、それは否定できませんね。うん。)
というのも、かねてよりE.T.氏とその「パートナー」である女性の間柄に関しては、私もどこか違和感(=単なるビザ/永住権のための「偽装結婚」カップルのような雰囲気、とでもいいましょうかねぇ。)を感じていましたので、この「元・友人」さんの話はある程度真実だろうな、と、いう気がするんですよ。
100%真実ではないとしても、ある程度は。



E.T.氏の場合、「Eckhart Teaching」という商標名で持って自分を「ブランド化」し、動画配信やグッズの販売(笑)を行うなど、その活動やビジネスの規模は「単なる一般市民」を超え、半ば公人といっても良いほど。
このように影響力、特に人の精神生活/霊的生活に影響力を及ぼす人物の場合、「どこからネタを仕入れてきたか」「客から金取って販売している"教え"がパクリではないかどうか」といった情報は、消費者にもある程度は開示されてしかるべきではないでしょうか。
私たちの口に入る食べ物の産地偽装がまずい、というのと同じで、私たちの心や頭に入る霊的な教えの「産地偽装」もやはり好ましいものではない。
私は、そう思います。



興味ある方のために、コメント欄に小分けにして原文(英語)と和訳の両方をアップしていきますね。明日以降になりますが。
E.T.氏のファンの方で、彼のイメージを崩したくない、下世話な暴露話を読むなんて、負のカルマを積むようなこと(...。)はしたくない、とおっしゃるのであれば、どうぞ、お読みにならないでください。



あ~あ。
完全に、「デジャヴュ (déjà-vu)」ですよね。これ。3年前の「エイブラハム」から目が覚めた時と全く同じ展開だなんて。ううむ。
またもや、アホやってしまいました。あまり進歩していない自分にトホホホ...です。
(ま、金額的な損失は今回、せいぜ$25程度、と軽微なのが幸いでした。充実した地元の図書館と、激安古本が手に入るチャリティーショップのおかげですよ。)




McSpirituality 
(ファストフード・スピリチュアリティ)。



安く、早く、手軽に買えちゃう、っていう物にすぐ釣られたりするな、ってことですね。
「さわるな! 危険!!!」とでも、でっかく赤字で書いておきましょうか。



「全米ベストセラー!」「オプラ・ウィンフリーが番組中で取り上げ!」
なんて枕詞が付いたら、その本/著者の言うことはいつもの三倍は疑ってかかれ、ってことなのかもしれません。
「これを買え!これを信じろ!」
...集団催眠かけられて、ポワワ~ンといい気分にさせられたって、いいこと一つもありません。
今回のE.T.氏のように、"Don't think."的な、独裁的な支配者層がいかにも好みそうなメッセージ、気をつけないとすぐに毒されますよ。
テレビ消して、ブラウザも閉じて、電波の届かないところへと逃げた方がいいのです。そして、自分の頭をしっかり働かせないと。
でないと、一方的に洗脳されて、後で悔やむ羽目になりますよ。



日本のマスコミや某大手広告代理店が好むと巷では噂の、「ゴ リ 押 し」大作戦。
まさか、アメリカでも全く同じことが、それもお人よしが多そうなスピリチュアル好きな人々への猛プッシュという形で、静かに、でも、大規模(世界規模!)に行われていただなんて。
まぁ、日本は流行でも何でも、必ずアメリカの一歩後を追いかけていますしね。
そのうち似たような現象が起こるかもしれません。
いや、もしかしたら既に起こっているかも。
くわばら、くわばら。




精神世界・宗教に関しては、
「故人となった著者の作品しか読まない」
「イマドキの人には、深入りしない。関わりを持たない。」
といったマイルール作って、守り通した方がいいのかもしれません。


...本物の「禅」と、ニセモノである「禅もどき」。
その違いがわかるようになるまでは、やはり地道に勉強するしかないでしょう。
頭と、心と、両方をフル稼働させながら。



歴史の淘汰を経て、なおも多くの人々から尊ばれているような「本物の教え」に直接当たってみる。
そこから、自分なりに何らかの真実をつかもうと、七転八倒してみる。
本気でぶつからなくっちゃいけません。
「本物」にじかに触れて、「本物」にしか出せない良質のパワーを見分けられるようになること。
「禅もどき」を見破るには、そういう長くてしんどくて遠い道のりを歩むしかないのだ、と思います。
受身で頭真っ白にして、ただ待ってるだけでは何も変わりません。
(「がんもどき」なら美味しく食べられるけど、「禅もどき」は煮ても焼いても食えないんだよ~。)


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(さすがに道元禅師の「正法眼蔵」は少々手ごわいので、まずはこちらの鎌田先生の丁寧な解説書から。)




「生きている人間などというものは、どうも仕方のない代物だな。
何を考へているのやら、何を言い出すのやら、
仕出来(しでか)すのやら、自分の事にせよ、他人(ひと)事にせよ、
解った例(ため)しがあったのか。
鑑賞にも観察にも堪えない。



其処に行くと死んでしまった人間というものは大したものだ。
何故、ああはっきりとしっかりとして来るんだろう。
まさに人間の形をしているよ。
してみると、生きている人間とは人間になりつつある一種の動物かな」

(「無常という事」小林秀雄 こちら↓の本、p.69より引用。)


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2014/04/23

エックハルト・トール:「道の駅」。 でも最終目的地ではない。

【注:こちらの記事は
旧・楽天ブログ2014.04.19の記事 
に寄せられたコメント欄での、a y a f u y a さんとの会話が基点となっています。
全世界的に大ベストセラーとなった「ニュー・アース」

ニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる-
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の著者、エックハルト・トールが「私にはもうエゴは無い。消えた。」と発言したことを私が槍玉に挙げたあたりから、面白い展開になってきました。一部はしょりながら、そのやり取りを転載します。a y a f u y aさんのコメント部分は、ハイライト表示にしました。



エックハルト・トールについての過去記事はこちらからどうぞ。

「今」の力 ~ 案外近いぞ。エックハルト・トールと林修先生。
http://plaza.rakuten.co.jp/backtotheessence/diary/201402120000/


フレディー・マーキュリーに学ぶ、「ペインボディ」との付き合い方
http://plaza.rakuten.co.jp/backtotheessence/diary/201403020000/









(...)

結局、「この人【黒犬べーやん注:エックハルト・トールではない、かつてa y a f u y aさんが読んでいたブログの書き手。】もなんてこたぁない、単なる大人になった空想好きの不思議ちゃん&人生生き辛仲間なんだなァ~~」と今では思います。これが一番腑に落ちるんですよね。
別にこの方が「人より悟ってる!」訳でも「特別なチャネラー★」でも何~~~でもなく。





そうですよね。
結局、「あなたも、私も、所詮地球という流刑地に流されておつとめ果たしている、未熟者」に変わりは無いのかも。
(その中で、「模範囚」がいれば、その人を見習えば何かいいことあるかもよ...?)



あ、私、「自分が悟ってる」と公言する人は「あっ、そう。それで?」と即、スルーしたくなるんですよ。
一気に聞く気を失います。
a y a f u y a さんはいかがですか?



あのエックハルト・トールさんも、「自分にはもうエゴは無い」と言っていますが、そこんところは「ほう、そうか。」と聞き流しています。せめて「少ない」程度にしてくれりゃ、説得力あったんですけどね。



ま、「ペインボディ」の説明は、第一級のファンタジー/SFとして自分の中では大いに響くものがありましたので、これからも彼の本は読み返すと思います。



ここまで冷静に見られるようになったのは、スピやオカルトを積極支持する人たちの考えから、一度完全に離脱したのが良かったと思います。これは自分にとって大きな収穫でした★(それだけ、思考のバイアスがかかっていたΣ(・ω・ノ))


「可愛い子には旅をさせよ」って、きっとそういうことだと思います!よかったですね、有意義な「旅」ができて。


すると、アヤスィ話は好きでも「100%モロ」に影響を受けることなく、ファンタジーとして楽しめますし。後はお気に入りの作家を見つけては楽しめばいいんじゃないかな~と★


うんうん。(激しく同意)
あとは、そのお気に入りの作家や宗教家、指導者の言葉の中で、自分に必要なものを選んで、上手に吸収していけばいいのですね。
で、特定の誰かを応援し、拍手を送りたくなったら、その時はそうすればいい、と。
あくまでも、応援。「支配下に入る」んじゃなくってね。


(...)


で、ここからが、a y a f u y a さんに宛てて、今日私が新たに付け加える返信部分となります。



スルーしたくなるっていうのは全く同感です。
「悟ってる人なんて、今現在生きてる人の中には一人もいない」っていうのが自論ですから★


そう思いますね~。
「自分にエゴは無い」と言うのって、なんとなーく、「アイドルはウ○コなんかしないんだ!!!」と言い張る、熱狂的な男性ファンの心理と大して変わらんような気が...。(←きちゃないたとえですいません。)



今生きてる人、それもまだまだ余命たっぷりありそうな(まだ60代ですから!高齢者だなんて呼ばないの!@神奈川県大和市)年齢の方に言われても、釈然としないんですよね。



エニアグラムという性格タイプ学の指導者、故・ドン・リチャード・リソ氏や、共著者であるラス・ハドソン氏もおっしゃっていました。


「エゴっていうのは、本当に頑固で、しぶとい。
死なないんだよ。
死んだと思ったその時に、また戻ってくるんだよ。」


と、何度も強調されていました。
私は、このお二方の言葉の方に、より安らぎを感じます。真実味があると思います。


人間の性格を研究して数十年。その世界では第一人者と呼ばれるようになった後もなお、人格的修養を怠らず、「師」と呼ぶ人の教えを求め、日々自己省察につとめている方々ですら、そう考えていらっしゃるのですから、ねぇ。
(ちなみに、リソさんは元イエズス会所属。ハドソンさんは東洋思想、特に道元の禅仏教を専門に学ばれた方です。)



実際、このエックハルトさんの「自分にはもうエゴは無くなった」発言、引っかかりを感じた人はたくさんいるみたいです。

書評サイト Goodreadsより
「エックハルト・トール:自分がエゴから自由になった、って、どうやって分かったの?」(英語)
https://www.goodreads.com/topic/show/1571085-how-does-eckhart-know-that-he-is-free-of-the-ego



次のYouTube動画に寄せられたコメントの多さ(1000超!)がそれを物語っていると思います...。




「エックハルトさんが言いたいのは、『アタマ (mind) 』『思考』と同一化した自分すなわち エゴ が 一 回 は 死んだ、ってことなんだろう?(その後どうなったかは知らんけど)」
...と、好意的に解釈する人も多い一方で、



「そんなこと口にするなんて恥知らずな」
「イエス様でもない限り、有り得んだろ~!」
とばっさり切り捨てる人も多いんですね。
a y a f u y aさんがおっしゃったのと同じように。



「悟ったと思った」人がいても、わざわざ口にする事なのか??という話でして。。。口にした時点で、誰よりも俗っぽいよな~って思います(´・ω・`)


この辺は東洋人、というか、日本人の【謙遜】の美学...というか、日本人によく見られる【自虐】の美学が関係しているかもしれませんね(笑)。
ええ、勿論、私もまったく同感ですよ~。
「あちゃー。わざわざ口にするかなぁ?」って、やっぱり反射的に思ってしまいました。





「確かに、エゴは死んだ。でも、油断していると復活する。」
程度の言い方だったら、「なるほど。」と素直に受け止められるんですが。
そうは言っても、エックハルトさんのエゴが非常に薄く、向こう側が透けて見える程に弱体化しているって事については何の異論もありません。
その辺にいるあなたや私といった、市井の凡人達と比べれば、エゴの統御ははるかにお上手なはずです。



(...こうした一連のグダグダも、やはり、私の【エゴ】の部分から出た反応なんでしょうけどね...。
他人の口から出た、「それ、怪しからんよ〜」な物言いを黙ってスルーするのって、ホントに難しいもんです。恐るべし、エゴ。
日、暮れて道遠し、です。)


「エゴが無い=私は人間じゃない」と言ってるのと同じだと思うので。

そうそう。「アイドルはウ〇コ...」 


←しつこいよっ!!!(怒)



(じゃあトールさんは妖怪か!?)彼の本は興味深かったけど、その不遜発言は聞き捨てならない★


確かに、水木しげるワールドにすんなり溶け込めそうな風貌...かも。
(生で講演会聞きに言った方の報告によると、猫背だそうです。)
ソース:http://www.elephantjournal.com/2013/11/eckhart-tolle-live-in-london-a-disappointed-fans-review-carli-susu/

















ちゃんちゃんこの好々爺風♡



まぁ、彼の場合、最近活動内容がどんどん資本主義バンザイ! 稼げるうちに稼いじゃえ~~~!って感じでビッグビジネス化してきた、っていう点も気になりますねぇ。
セミナーの費用がベラボーに高かったり。例えば、2009年のオーストラリア・2日間セミナーのお値段は、当時のUSドルで$685。6万円台後半、ですね。宿泊代含まず、で、このお値段なのですから、やはりかなりお高い方でしょう。)
(ソース:http://www.spiritualteachers.org/eckhart_tolle.htm



...と書きかけたところで、一大発見!!!
あ”~~~~!
ヘイ$ハウス(ルイーズ・L・ヘイが築き上げた、ニューエイジ系書籍を中心に刊行する新興の大手出版社。)主催じゃないですか!

http://www.hayhouse.com.au/tour_details.php?tour_id=11 

...そりゃぼったくり値段でも当たり前だわ。
エックハルトさん、組む相手をちょいと間違えたかもね。
(あまりご存知ない方へ:そういう会社ナンデスヨ...ヘイハウスって~のは。)
大企業ですから、ルイーズさんのご意向とは関係無いところで値段設定が行われているかもしれませんけどね...。

改訂新訳ライフヒーリング(旧ライフ・ヒーリンク゛) You Can Heal Your Life
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エックハルトさん、この時のオーストラリアツアーで受けた批判の声にちゃんと耳を傾けたんでしょうかね。
最近ではご自分たちによる自主興行イベントがほとんどのようです。
6月のニューヨーク州・Omega Instituteで行われるトール夫妻による5日間セミナーは、食事・宿代込みで$1195ですって。
これは悪くないですね。



どうもエックハルトさん、アメリカではお馴染みの、テレビ伝道師(TV evangelist)化しつつあるような気がして、ちょっと心配です。
Eckhart.TVなんていう、有料定期購読の動画配信サービスを立ち上げたり、「二匹目のドジョウ」的なDVDや関連書籍・グッズが後から後からボコボコ出てきたり...。
「それって『霊的指導者(スピリチュアル・ティーチャー)』『自分はグルではない』と宣言した人として、どうなのよ!?」と突っ込まれても仕方ないかな〜、って気がします。


「霊」と「金」。
基本的に、あまり相性が良いとは言えません。



ネット上で小耳にはさんだ噂ですが、中国系カナダ人の奥さん、キム・エング(Kim Eng)さんが元々マーケティング畑出身の方のようで...
何か関係あるかな。



ま、いろいろありそうなので、今回はこの辺で幕引きとしましょうか。


a y a f u y a さん、今回も面白い話を提供してくださいまして、ありがとうございました!


2014/04/19

Kindle本 ”Psychopath Free" (「サイコパスからの自由」)にレビューしました。

新装開店の本ブログでは、Amazon.co.jpの「アソシエイト」システムを組み込めるようにしました。
以前の楽天ブログでは、楽天ブックスを初めとした楽天市場内のお店の画像&リンクしか使えませんでした。
(ま、当たり前ですよね。楽天内でお買い物してもらいたいからこそ、無料でサーバースペースを貸してくれているわけで。)


使い勝手や、快適さに関して、楽天ブログにこれといった不満があったわけではありません。
ただ、楽天ブックスって、洋書方面にはあまり強くないんですよ。中小規模の出版社から出ているような本だと、扱っていない場合がほとんどなんですね。
ブログ内で取り上げたい本があるんだけど、残念ながら楽天では取り扱い無し、...というケース、過去に何回も経験しました。
そういう時は仕方なく、画像無しでアマゾンの商品へのリンクを貼ってお茶を濁しましたけど。
今回のBloggerへのお引っ越しを果たしたことで、「ブログ記事内にAmazonへの画像付き直リンクを貼りたい!」という願いがひとつ叶いました。
めでたし、めでたし。


数日前、洋書Kindle本(電子書籍)に、このようなカスタマーレビューを投稿しました。
以下はそのレビューに少々の補足、および商品リンクを加えたものです。
英語ではありますが、一人でも多くの方に存在を知っていただきたいので、こちらにも載せてしまいます。
(掲載後に加筆した部分は、薄緑色でハイライト表示しました。)


∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥


「さよなら、性善説。ようこそ、リアルでダークな人間社会へ。」
2014/4/17
By 黒犬べーやん (アメリカ西海岸)

レビュー対象商品: Psychopath Free: Recovering from Emotionally Abusive Relationships With Narcissists, Sociopaths, & Other Toxic People (Kindle版)





サイコパス。
平たく言うならば、


【良心を欠き、他人を犠牲にすることに何の罪悪感も抱かない、魔界人】


とでもなるでしょうか。
この語に接した瞬間、「いる、いる。そういう人。どこにでもいるんだよ。」と、すぐに具体的人物像が思い浮かぶ人には、もはや説明の必要は無いでしょう。映画「羊たちの沈黙」で、アンソニー・ホプキンス演ずる猟奇的殺人犯・ハンニバル・レクターのような、特殊な人物とは限らないのが、この「サイコパス」の一番の恐ろしさです。


見かけはいかにもいい人。
魅力的で、誰もが好きになってしまうような、話のうまい人。
近所でも評判の「いいお母さん」、そして上役の受けも抜群の、有能な若手社員。
...そう。要するにどんな世界の、どんな人間関係にもひょこり現れる可能性があります。
隙あらばあなたの弱みを巧みに突いて、じたばたともがき苦しむあなたの姿を見ることで、極上の喜びを味わう、という、常人には理解できない精神構造の持ち主。
それが本書の主題である「サイコパス」です。


こちらは、書名と同じ名前の"Psychopath Free"という、被害者救済・相互サポートを目的としたHPを運営する中心メンバーのお一人、Peaceさん(仮名・男性だそうです)と、HPのお仲間達の協力によって生まれた一冊です。
専門の心理学者や精神科医が関わっているとは明記されていないものの、
「サイコパス被害者が再び強く生きられことを目指した、サイコパス被害者の手による本」としては実によく出来ていると思いました。



M.スコット・ペックの「平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学」 (草思社文庫)。

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マーサ・スタウトの「良心をもたない人たち」 (草思社文庫)。

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サンディ・ホチキスの「結局、自分のことしか考えない人たち」。

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草思社
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(草思社さんっ!そろそろ、文庫化、真剣に検討してくださいよ!)


ジョージ・サイモンの「あなたの心を操る隣人たち: 忍びよる『マニピュレーター』の見分け方、対処法」
(原題は"In Sheep's Clothing":つまり、「羊の装いをした(狼)」。サイコパス対処マニュアルです。)

あなたの心を操る隣人たち
ジョージ サイモン
草思社
売り上げランキング: 95,484



(あ"ーーーーっ!どうして原書の「見かけは羊、中身は狼」というインパクト極大!の名タイトル+表紙イラストを使わずに、人畜無害の装丁でこぎれいにまとめちゃったんでしょうねぇ。
In Sheep's Clothing: Understanding and Dealing with Manipulative People
Parkhurst Brothers Publishers Inc (2010-04-01)


実に勿体無いですよ。「マニピュレーター」なんて生ぬるいカタカナ言葉じゃ、大半の日本人読者にはアピールしないと思うんですけどねー。)


【2014・10・8追記:文庫版、出ました!しかも新邦題で!!!】


文庫 他人を支配したがる人たち (草思社文庫)
ジョージ サイモン
草思社
売り上げランキング: 130,767



といった、一連の人格障害・自己愛人間を扱った本を、被害者の側から読み、筆者達の意見に同意される(された)読者の方々には特に好意的に受け入れられると思います。


内容を簡単にまとめますと:

1.サイコパス人間の見分け方

2.不幸にしてそうした人間と関わりを持ち、精神的にダメージを受けてしまった場合の対処法

3.注意すべき落とし穴 
(「No contacts」:加害者とは一切の接触を断つことが、問題解決のためにいかに大切であるかが、丁寧に説明されています。)

4.回復期を迎えた人へのアドバイス
(「本当はみんないい人なのに」
「今は難しいけど、話し合えばいつかきっと理解し合えるはず」
といった、子供じみた人間観から卒業することの必要性を説きます。性善説もほどほどに...ですね。)

5.サイコパスとの出会い、そして決別によって得られた、「宝」
(ここだけはぜひご自分で読んでいただきたいです。よって、ネタバレは控えます。)


英語ですが、それ程難しい語彙は使われていません。
あくまでも「被害者」側に立った、被害者を支えるための、被害者の手による本ですので、心理学用語、精神医学用語の使用も控えめです。専門書にありがちな、堅苦しい本ではありません。
それでも、読み終わった時には言いようのない程の満足感で胸がいっぱいになりました。


「辛かったけど、でも、決して無駄ではなかったのだ。あの時の経験は。」
そう晴れやかに言い切れるだけの自信を与えてくれる、実にパワフルな本だと思います。
サイコパス人間に人生を台無しにされないためにも、また、明るく前を向いて力強く歩いていくためにも、ぜひ手に取っていただきたい、そういう一冊です。


まだ買ったばかりで読んでいませんが、本国アメリカではこちらも高く評価されていますので、興味ある方はチェックしてみてください。

となりの脅迫者 (フェニックスシリーズ)
スーザン・フォワード
パンローリング
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スーザン・フォワードさんといえば、何と言ってもこの本の著者ですからね。「毒親」を日本語として定着させたのは、彼女(と、翻訳者の玉置悟氏)の功績でしょう。

毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)
スーザン・フォワード
講談社
売り上げランキング: 499



「となりの脅迫者」(原題・Emotional Blackmail)にも大いに期待して良さそうです。
そういえば、加藤諦三さんもこちらの本の中で大きく扱っていらっしゃいました。出てくる人名がカタカナばかりだと頭痛が痛いの~(←わかるわかる。かく言う私も最近は...。)という方に。





ささいなことで傷つかない人の人間関係 (だいわ文庫)
加藤 諦三
大和書房
売り上げランキング: 189,379




∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥

それにしても、激安ですよね〜、この"Psychopath Free"のKindle本。
本国・アメリカでも、全く同じ$2.99というお値段なんですよ。考えてみると、これって驚異的なことだと思いません?
いくら輸送費がかからない、関税などの諸費用がかからない電子本とはいえ、アメリカと日本で同じ本がほぼ同じお値段で買えるのですから。それも、一瞬のうちに手元に届く、という便利さ。


コーヒー一杯程度のお値段で買えちゃう本。
それが多くの人達に勇気を与え、人生を大きく変えてしまう程のパワーを持っているのですから、なかなかすごいことだと思いませんか。
素晴らしい本をうれしい激安価格で提供してくれたPeaceさんとそのお仲間たちには、心から感謝したいと思います。
(ちなみに、日本では未発売ですが、米国のアマゾンではペーパーバック版も扱っていますよ。そちらも$7少々と、実に良心的。儲け主義でやっているのではないことが、よーくわかります。)


"Psychopath Free" のHP(英語)
https://www.psychopathfree.com/


Facebookページ(英語)
https://www.facebook.com/PsychopathFree 
*世界中の読者からの感謝の声、体験談など、参考になります。





読み終わった後にさわやかな感動と、癒やしのエネルギーとを与えてくれる”Psychopath Free"の本。
こちらのブログ上でも少しずつ内容をご紹介していきますね。

今のところ前半部分だけですが、日本語にしてみました。 近日中に更新する予定。
「さよなら、サイコパス ~Psychopath Free~」(Peace著) 試訳
http://sayonara-psychopath.blogspot.com/

*蛇足。*

テレビCMを見て、「Kindle専用端末をわざわざ買わなきゃいけない」と思い込んでいる方、いませんか?
スマホやタブレットをお持ちなのであれば、すぐにでもKindle生活、始められますよ。
専用端末には専用ならではの良さがありますが(特に白黒画面が目に優しいKindle Paperwhite)
、でも、アプリ版Kindleでも十分いけますよ。
その話はまた別の機会に譲るとしましょう。

2014/04/09

三つ子の魂、百まで。~People of the Lie (平気でうそをつく人たち)~

日本にいる義妹から聞いた話です。



小学校低学年の甥っ子に、X君という同級生がいます。
幼稚園の時から、一貫して負けず嫌い。同級生、その親たちにもそれは広く知れ渡っています。



負けず嫌いなのはまぁ、いいんです。
スポーツや勉強など、エネルギーを注ぐ方向性さえ間違えなければ、「できる子」「クラスのヒーロー」となって、「おっ。自分、なかなかいいじゃん!」と、肯定的な自己イメージを上手に築き上げながら、周囲から一目置かれる人として成長できる可能性がありますから。



ただ、X君の場合、力を向けるベクトルがちと、おかしくなっているんですよ。



例えば、甥っ子が「オレ、昨日、家族でディズニーランド行ってきたんだ!」と休み時間に同級生に話した、とします。
そこで、周りの同級生も
「あー、オレんちもこの前の春休みに行ったよ~!」
「いいなー。」
「うちは、来月の開校記念日の休みに行くってお母さんが言ってた~」
と、反応。ここまでは大人の集まりでもよくあるやり取りでしょう。



そこで件のX君が登場します。
「オレなんかなー、昨日とおととい、ディズニーランドのところのホテルに泊ったよ。
二日間連続でディズニーシーとディズニーランド両方周ったんだぜ!」



しーん。



最後の最後に出ました。X君のいつもの、「皆を圧倒する、人一倍どでかい自慢話」が。
あぁ、またか。
いつものアレだな。
小学校低学年の男児たちは、うんざりした様子で軽くうなずき合い、お約束のように話の矛先をスーッとディズニーランドから逸らし、何事も無かったかのようにまた他愛の無い話を続けるか、「おぉ、ドッヂボールやろうぜ!」と、校庭へと駆け出すかするのだそうです。



クリスマスが終わって、年が開け、学校が再開された時もそんな感じでした。
「オレ、ポケモンYもらった!」(*昨年発売された任天堂の大ヒットゲームソフト。)
「オレもさー、兄貴と一緒に使うからってことでWiiU(←ゲーム機。)と、マリオのソフト買ってもらったー!」
「今度、やらせろよ~」
「いいよー!」



そして近付いて来たのが、X君。
「オレなんかなー、ニンテンドー3DSに、ゲーム3個もらって、それから2月にプレステ4(←これも、ゲーム機。)買ってもらえるって約束してるんだぞー!」



しーん。
またかよ。
男の子たちは、ちゃんとわかっています。
適当に話をはぐらかし、かと言ってX君を排除するでもなく(その辺りがまだ低学年だけあって、みんなかわいいというか、心がやさしいというか。)、そのまま別の話や、別の遊びへと上手に移っていきます。



小学校低学年とはいえ、甥っ子や、仲の良い友達は学校から帰った後も、習い事やらスポーツ少年団やらで、放課後も結構忙しいもの。
「そういうのって、どーなのよ。」と、批判的な目を向ける方も大勢いらっしゃるとは思いますが、ま、今日はそのことは置いといて、と。



ある日の午後。
甥っ子が水泳教室から出てきて、迎えに行った母親(義妹)と会った瞬間、なんと例のX君が偶然通りかかる、ということがありました。
習い事にほとんど行っていない(甥っ子談)というX君。
いつものように、一人、暇そうに自転車で走り回っていたようです。
義妹曰く、「X君の○○(甥っ子)を見る目に、なんともうらやましそうな、恨めしそうな、複雑なものを感じてしまった」そうです。



X君には中学受験を控えた年頃のお兄ちゃんがいて、親の関心がほとんどそっちに行ってしまっているらしい、習い事らしきものもほとんどさせてもらっていない...という話を伝え聞いていただけに、義妹は「何の悩みもなく、嬉しそうに水泳教室から出てきた○○の姿を、親から放置気味にされているX君に見せつけたようで、ちょっと申し訳ない気持ちになってしまった、と言います。
「あ、まずい所で会っちゃったな。」と思ったそうです。



それからしばらく経った、ある日のこと。
たまたまX君は近くにいなかったようです。ふと、一人が口にしました。


「Xの話、うそばっかりだよ。」
「そうそう、あいつ、うそつきだよな!」



...みんな、口に出しこそしなかったものの、実は気付いていたんですね。X君の、辻褄の合わない自慢話が嘘だらけ、ってことに。気付いていても、上手にスルーしていただけ。(やるなぁ、小学生男子諸君!)




今のところは以前と変わらず、みんな仲良く遊んでいる模様。
でも、そのうち「あいつと遊ぶなよ」「あいつと口聞くなよ」という、村八分的な構図へと変わってしまうのでしょうかね。
X君本人が「こんなことをしていては、みんなに嫌われる。やめなければ。」と気付かない限り...。





(なるほど。現実とフィクション境目がまだ曖昧な、幼少期の一時期をどう乗り切るかが大切なんだな~。)

最近、こちらの本の文庫版をようやく手に入れ、少しずつ読み進めています。


文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫)
M・スコット・ペック
草思社
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子供が精神科の診療に連れてこられたときには、
その子供は「見なし患者」と呼ばれるのが通例となっている。
この「見なし患者」という名称を用いることによって
われわれ精神療法医は、その子が患者と呼ばれるようになったのは、
両親やほかの人たちがそういうラベルをはったからであって、
治療の必要な人間はほかにいる、ということを
言おうとしているのである。


(中略)


障害の診断を進めるうちに、その障害の源が当の子供自身にではなく、
その子の両親、家族、学校あるいは社会にある、ということを
発見することが多い。
(「平気でうそをつく人たち」M.スコット・ペック著、森 英明訳、草思社文庫、2011年、pp.110-111)



参考過去記事:ある【自己愛母親】サバイバーの物語
http://plaza.rakuten.co.jp/backtotheessence/diary/201310130000/


本書を読みながら、私自身にもかつて、X君のように「うそに次ぐうそ」の得意な同級生がいたことを思い出しました。



中学一年の時、同じクラスだった美少女・Kちゃん。
ハーフかクォーターと言っても通じそうな、栗色のふわっとした巻き毛に色白の肌、そして舶来物のビスク・ドールのように大きな、少し憂いを含んだ栗色の瞳。



アニメが好きで、イラストを描くのも上手。
あんまり乗り気でない私をどうにかして「Kちゃん's ワールド」に引き入れたかったのか、SF小説の文庫本もいっぱい貸してくれました。


そう。確か、朝日ソノラマ文庫のこの人気シリーズ。(いや〜、話の筋、全くといって良い程覚えてないです...。)






今思うに、お姉さんがいたこともあって、早熟な子だったんでしょうね。



Kちゃんは、私が引っ越してくる前に横浜の某所に住んでいたことを知ると、
「私、あそこの駅の近くの幼稚園に通ってた。」と言いました。
「え、何て幼稚園?」
「☆☆☆幼稚園。」
「へー!Kちゃん、☆☆☆幼稚園なんだ~!うちの親も、『一度あそこにいれようかな、って考えたことがある』って言ってたよー!結局、近いからS幼稚園にしたんだけど。」



すると、そこからKちゃんの壮大なる虚言サーガが始まったのです。



☆☆☆幼稚園は、実は国立の、入るのが難しい、とっても素晴らしい幼稚園。
(嘘!横浜市内に国立の幼稚園なんて、昔も今も存在しません!!!)



中の敷地はすっごぉーーーく広くって、木でできた遊具がたくさん置いてある。
国立だけあって建物も立派で、
(だから、国立じゃないって!)



毎日子供達が思いっきり体動かして遊べるだけの運動施設も揃ってる。
天国みたいに素晴らしい幼稚園だった。
(ここまで来れば立派に脳内ファンタジーかな。)



今と違い、あの頃はインターネットも無く、事実確認と言えば信頼できる地元民からのクチコミしか無かった時代。
同じクラスのKちゃんが、いつも顔付き合わせているKちゃんが、平然と、しかも何度も何度も「☆☆☆幼稚園は国立。入るのに試験があって、落ちる人もいる。」という、嘘を吐き続けていたとは...。
私が大真面目に「へー、そうなんだ!すごいねーーー!!」と、毎回感心する様子が、よっぽど面白かったんでしょうかね。
彼女がどのような気持ちで嘘を重ねていたのか。私にはよくわかりません。



このKちゃんの嘘に、私はなんと20数年間もだまされ続けていました。
たまたま横浜市内の幼稚園情報を集めていた時、懐かしい☆☆☆幼稚園の名前が目に入りました。
「なんだ、ごくフツーの私立幼稚園じゃないの。国立の幼稚園!だなんて、嘘八百もいいとこだ...。」
あまりにも年数が経ちすぎていたせいか、もう怒る気にもなれませんでしたよ。
12〜13歳の若さにしてほぼ完成の域に達していた、Kちゃんの嘘つき癖には呆れましたけど。



その後、学年が上がってクラス替えをしたことで、Kちゃんとは疎遠に。
新学年になって間もない、ある日のことです。
突然、私と、それから数名の、「中一クラスの仲良しグループ」に属していた女子生徒が「ちょっと、相談室まで。」と呼び出しを受けました。


当時の荒れ果てた公立中学において、「相談室」というのは、「取調べ&尋問室」「お仕置き部屋」と同義だったことは、校内の誰もが知っていました。
「え”!?な、何も悪いことしてないけど...。」と大いにビビりつつ部屋に入って行くと...。



一年の時の担任の先生と、そして、他のクラスに散らばっていった中一グループの友達が全員揃っていたのです。
「絶対他の人には黙っていてね。
実は、この一週間、Tさん(Kちゃんのこと)がずっと家に帰っていないの。あなたたち、去年仲良かったから、何かTさんから聞いていない?」



いえ、全然。
他の子も、同様。
どうやら、Kちゃんは一週間程前から家出して、行方知らずとなっていたようです。



その後、どういう経緯があって、Kちゃんが無事家に帰ってきたか、詳しくは知りません。
もはや知りたいとも思いませんでした。
あまりかかわりたくない、というのが正直な気持ちでした。
Kちゃんが、足を踏み入れてはいけない、薄暗い世界へと行ってしまったような気がして。
今はどうしているんでしょうかね。




年端も行かない子供が執拗に繰り返す、嘘。
そこに込められた意味を、大人はもっと真剣に探らなければならないな、と思います。



悪を直視できなければ、
人間の悪をいやすことなど期待できない。
悪を直視するということは
けっして気持ちのよい光景ではない。




(中略)



人間の悪をいやす戦いは、
まず自分自身との戦いから始まるのがつねである。


そして、自己浄化こそ、つねに

われわれの最大の武器となるものである。


(「平気でうそをつく人たち」pp. 5-6)


2014/04/02

「トモダチ詐欺」に気をつけろ。~TVドラマ「三匹のおっさん」より。【後編】

前編はこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=5zu6ZlWFGUM

(ノリさんの見合い相手は元・ミス・ユニバース日本代表の、あの方♪)


仕事場では失敗の連続で叱られてばかり。
パート女性の輪にも入っていけず、貴子は一人落ち込むばかりの毎日でした。
息子の祐希や、客として精肉店を訪れ、知り合いとなった早苗(ノリさんの娘)の優しさが身にしみます。
それでも、元々高くなかった彼女の自尊感情(=ありのままの自分にYes!と言えるココロ、ですね)を、プラスへと転じることはできませんでした。



音大生だった貴子は、キヨさんの息子・健児との間に予定外(笑)に子供を授かり(それが現在高校3年生?の祐希。)、止む無く学生結婚。(だからまだ38歳という若いお母さんなんですね。なるほど。)
以後、「いつかピアノ教室を開きたい」との夢を抱きつつ、専業主婦のままずっとこの年齢まで来てしまいました。



若さ。
男性に好まれる、可愛らしい外見。
エリート銀行員のだんな様。
イケメン高校生の息子。
都内二十三区内の、広い土地付一戸建て・持ち家住まい ⇨⇨⇨ 将来、確実に転がり込んで来る、親からの資産。



周りの「ちょい不幸せ気味」な中年女性達から嫉妬される材料ばかり、です。
パート女性達があそこまで悪口で盛り上がったのも、そうした貴子の「外側から見える幸せ」への妬みゆえでしょう。



居酒屋での場面。


「清田さん、ダンナの親が死んだら遺産が...」なんて話聞いたら、そりゃ不愉快になるわ。


「あの人が妬ましい」と認めてしまうと、自分たちのミジメな現状にも気付かざるを得ない。
でも、それはあまりにも辛すぎる。やりたくない。
ならば、同じようなミジメ者同士一致団結し、恵まれ過ぎている人・貴子を仮想敵とみなし、こき下ろせば良い。
「自分達は時給分の仕事をまともにこなす、優秀な従業員だ。それに引き換えあいつは...」
自分達が上だ。と確認し合えば、しばしの間、おのれのミジメさを忘れられる...。



かつて「使えない新人」と呼ばれた時代が自分達にもあったかもしれないのに...。



その場にいない人の陰口や噂話。決してほめられたものではありません。
でも、職場によっては「ガス抜き」としての機能を果たしてくれるため、100%の根絶が難しい場合もあるのでしょう。
必要悪、っていう奴ですね。



一方、悪口には参加せず、「またとないカモ」として早くから貴子に注目していた【トモダチ詐欺師】の育代。
彼女は、外側に表れた幸せな若奥様、ではない、もう一人の貴子も観察していました。
捕食者ならではの鋭い観察眼でもって、貴子の内面を蝕む負の感情をも見透かしていたのです。



「外で働いたこともない、世間知らず。」(自己評価、マイナス50点!)
「ドンくさい。仕事がのろい。」(同じく、-20点!)
「しょっちゅう失敗しては皆に迷惑かけっ放し。」(同上!)
「みんなの輪に入りたいのに、それができない。」(-10点!)




他人がどう思おうが、貴子自身にとっての自画像は
【自己評価・マイナス100点(しかも改善の兆し全く見えず)の、ダメな奴】でしかありませんでした。
(結末部分では、その【貴子=ダメな奴】オーラに清田家の全員が同調し、ますます強化する、という悪循環に、なんとキヨさん自身も巻き込まれていた、という事実が、克恵さんの言葉で明らかになります。
家族から「ダメな奴」と思い込まれているようでは、「私、これでいいんだ!」という自尊感情が育たないのも当然でしょう。)



貴子が放つ【ダメな奴オーラ】に気付きつつも、せいぜいストレス解消のサンドバッグとして使っちゃおう、というレベルで止まっていたのが、他のパート女性達。
それに対し、育代は「こいつを弄(もてあそ)んで、甘い汁吸ってやるか。」と、ブラックな企みを実行に移してしまいます。


良心をもたない人たち (草思社文庫)
マーサ スタウト
草思社
売り上げランキング: 1,449




「サイコパスはふつうの人より刺激にたいする欲求が強く、
結果として社会的、肉体的、経済的、あるいは法的にリスクを冒すことが多くなる。
特徴をあげると、彼らは人を惑わせて危険な冒険に引きずりこむ。


共通して病的に嘘をつき、人をだます。



あるいは”友人”に寄生虫のように寄りかかる。


(...中略...)

そしてつねに、いかなる問題にたいしても
責任を感じない点は共通している

(「良心をもたない人たち」マーサ・スタウト著、木村博江 訳、草思社文庫、2012年、p.17)


https://www.youtube.com/watch?v=qeJyCW_uG1U

育代はまさにこの「病的な嘘つき」でした。


どんな嘘つきも、最初っから「特大級の嘘」をぶつけてくることは稀です。
カモさんの警戒心の強さを確かめる意味もあって、まずは小さな嘘から出してくるんですよ。
そこではっと気付くことができれば、被害は最小限にとどめられるんですがね。



残念ながら、こうした海千山千的人間にあまり免疫が無いお人よしの貴子。
長年、温かな家族に守られてきたことへの代償として、人生経験が不足してしまったことは否めません。
育代の言葉をバカ正直に受け取ることしかできない貴子は、さらに大きな嘘へと巻き込まれていきます。



「お茶しよう」と自分から誘う。
ドーナツ屋のレジで会計、という段になって「あ、大きいのしかないや。次、必ず返すから」。
平然と育代は嘘をつきます。



次のお茶の時も、「大きいのしかない」の嘘。
再度払う、貴子。



またその次のお茶でも、「大きいの...」の嘘。
性懲りもなく、また払ったそうです。



職場が一緒なのですから、借りたお茶代を返す機会なんていくらでもあるはずなのに、おかしいですよね。
そう。「おかしい」に目をつぶってはいけなかったんです。


「いい人」をやめる覚悟を決めて、
キッパリと相手のおかしな言動を

問い正すべきだったんです。
さっさと逃げるべきだったんです。



さてさて。
貴子が貸した金を請求して来ない。つまり、「いい人」イメージを捨てるだけの度胸が貴子に無い、と確定できた今、育代は「お試しモード」からいよいよ「本気の詐欺モード」へとギアチェンジします。



そして給料日。
お嬢さん育ちの貴子が「自分の力で初めてもらったお給料」です。それはもう、特別なお金に違いありません。
あまりの嬉しさに、思わず家族全員にケーキを買って帰った程でした。



気分高揚中♪につき、ただでさえゆるゆる~のガードが一段と緩くなっている貴子を、天性の捕食動物・育代が見逃すはずがありません。
5万円貸して、あなたしか頼れないから...と、頼み込むんですよ。
その理由がこれまたふるってましてね。



磁気ネックレス買っちゃった,ですって(笑)。
チラッと襟元から出したその品、どう見積もっても数千円以下...。



「お願い。5万円貸して。次のお給料で必ず返すから。
旦那に言えない買い物しちゃったの。
代金払わないと明日取立てに来る、っていうの。
もうクーリングオフできないって。旦那にばれたら殴られちゃう...。」



もう、この言い訳ひとつに含まれる要素だけで「三振バッターアウト!」でいいですよね?
距離を置きたくなりません?



へそくりで払えないとわかっていて、高額商品を買う。
しかも、支払いをズルズルと引き延ばし、取立て寸前。
で、極め付けが「ばれたら殴る」ような旦那がいて、事を治めるためには他人を巻き込んでも構わない、と思っている。



そう。聞いた瞬間に浮かぶ、「ん!?」「何それっ!?」「あらぁ~???」の、「?」=違和感。それをすぐに打ち消さない、無視しないことが非常に大切です。
あなたが感じる違和感。それは相手が「今、嘘をついた。」という、直観からの警告サインかもしれません。


「どんな種類の関係であれ、新たなつきあいがはじまったときは、
相手の言葉、約束、責任について『三回の原則』をあてはめてみること。
一回の嘘、一回の約束不履行、一回の責任逃れは、
誤解ということもありえる。
二回つづいたら、かなりまずい相手かもしれない。



だが、三回嘘が重なったら嘘つきの証拠であり、

嘘は良心を欠いた行動のかなめだ。

つらくても傷の浅いうちに、

できるだけ早く逃げだしたほうがいい。」
(同書、pp.210-211)



ドーナツ代金踏み倒し。
加えて、よくもまぁ、毎回飽きずに...と呆れる程に次元の低い、パートの上司・克恵への中傷。
そうそう。昔、運転免許の取得に失敗した、と貴子が漏らしたことに対し、



「若い頃からちょっとどんくさかったのね~」



と、さりげなく、でも失礼極まりない顔面パンチを食らわしてきた、っていう場面もありました。
「庶民派ぶっちゃけ系キャラ」を前面に出しながらも、実は単にガサツで口の悪い、イヤな奴。
視聴者にもはっきりと伝わりました。
うまいです。この描き方。



あーあ。貴子がマーサ・スタウトさんの「三回の原則」を知っていたらなぁ...。



「三回違和感アウト→逃げろ!」のオキテに従って、育代との「お茶」を数回程度で打ち切りにしていたら、「5万円貸して」なんて大きな話に発展することも無かったでしょうに。



渋々5万円を渡してしまった貴子。
誰もが予想した通り、育代はその直後に精肉店でのパートを突然辞め、姿を消します。



大切な初給料を取り戻すべく、店長から育代の住所を聞きだし、「5万円返して」と育代に直接詰め寄ったものの、貴子を待ち受けていたのはとんでもない「逆切れ」反応でした。



「あなたがもっと前に『返して』と言わなかったから。
あなたが金にルーズだったから、こうなった。
それに何よ、家まで押しかけてきて!」



「盗人猛々しい」って、こういう時に使います。



一見、魅力的だが、

うそをついて人をあやつり、

空涙をながして同情をひき、

追いつめられると逆ギレする。


文庫版「良心をもたない人たち」の帯に付けられたキャッチコピーです。
どこかの誰かに当てはまりそうな一節ですね。



幸い、ドラマは勧善懲悪モノのセオリー通りに進行。
最後は正義が勝つ!チャンチャン♪で、爽やかに終わります。フィクションですから。


ま、まさかの【女神降臨】!


そうでもなけりゃ、とてもやりきれませんよ。
嘘つきが高笑いをしている陰で、正直者が泣きを見るような世界。
悲しいかな、私たち人類は未だにそのような世界から卒業できていないんです。