2016/04/07

ティアーズ・フォー・フィアーズ ”Advice for the Young at Heart" 和訳

1989年、ティアーズ・フォー・フィアーズ3作目のアルバム・"Sowing the Seeds of Love"(邦題「シーズ・オブ・ラヴ」)からの知る人ぞ知る名曲です。
先日のスパンダー・バレエ「ゴールド」に引き続き、日本語訳に挑戦してみました。



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「心若き人へのアドバイス」(Advice for the Young at Heart) 
Written by Roland Orzabal and Nicky Holland


心若き人へ アドバイスを送ろう

やがて 僕らも年老いる


今やらずして いつやるのかい?


あまりにも多くの人が 秘密の世界で暮らしてる
ママ役 パパ役 彼らが役柄演じている間に

僕らは少年少女で行くとしよう


今やらずして いつやるのかい?


ハッピーにもなれるし
かなりめでたい奴にもなれる
僕と 僕の影(シャドウ)だけが出てくる
ごっこ遊びに興じられれば それで満足
ほら 早く...


たとえ崖っぷちまで追い詰められても
僕は言うだろう 「やれるもんなら、やってみな!」
いいじゃないか 
毎日毎日 胸ワクワク 期待しながら 生きたって


君を思い 君
を待ち受ける愛に思いを馳せつつ
僕は誓おう 負けるもんか ぶれるもんか って
その大きな茶色い瞳が僕に言う
「そんなの 当たり前じゃない」 
世界の全ては 僕らの手の中にある


心若き人へ アドバイスを送ろう
やがて 僕らも年老いる


今やらずして いつやるのかい?


愛は約束
愛は思い出の一品(ひとしな)
一度渡せば 決して忘れ去られることは無い
消えるがままにさせてはだめだよ
もしかしたら これが最後のチャンスかもしれないのに


今やらずして いつやるのかい?


勤務時間はもう終わったんだ


なぜだか涙がこぼれるよ
誰かが 僕の魂を 眠らせてしまったから


君を思い 君を待ち受ける愛に思いを馳せつつ
僕は誓おう 負けるもんか ぶれるもんか って
その大きな茶色い瞳が僕に言う
「そんなの 当たり前じゃない
世界の全ては 僕らの手の中にある


心若き人へ アドバイスを送ろう
やがて 僕らも年老いる


今やらずして いつやるのかい?


勤務時間はもう終わったんだ


やりたいことは 何でもやれる
その気になれば どんなことでも


アドバイスだよ...





(※英語のオリジナル歌詞はこちらを参照しました。
http://genius.com/Tears-for-fears-advice-for-the-young-at-heart-lyrics


イングランド南部・バース(Bath)出身の二人組・ティアーズ・フォー・フィアーズ。
1980年代初頭にメジャーデビューし、数々の大ヒットで知られています。


彼らの詳しい経歴などについては、こちら↓の日本語版Wikipediaページが素晴らしく充実していますので、ぜひ、そちらをご覧になってください。
(きっと、彼らの熱心なファンの方が執筆・編集作業に取り組まれたのでしょうね。感謝!)


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BA



今回、ご紹介した曲。
なぜ、タイトルが「心若き人」("the Young at Heart")であって、単なる「若い人」("the Young")へ送るアドバイス、でないのか。
そこんところに着目したいですね。


これ、おじさんおばさんが、残り少なくなってきた年月をぼやきながら、「あんたも若いうちにいろいろやっといた方がいいよ」と、若い子に説教するための曲、じゃないです。
YouTubeコメントを読むと、誤解している人も若干いるようですが。



【人間にとって大切なのは、内面の瑞々しさ。

社会的な役割や年齢といった、
外からの押し付けに囚われるあまり
自分本来の魂を殺すようなことがあってはならない。

心の持ち方、心の在り方次第で、
何歳になっても人生は変えられる。
幸せは、そうやって自分の力で作り上げていくものさ。】



ローランド・オーザバル(帽子かぶって横でギター弾いている方の人)が伝えたかったのは、そのようなことではないかな、と思います。


普段はサイドヴォーカルに回ることの多いカート・スミスの歌声、それに表情。いいですね。
動画中の新婚カップルや、演奏するメンバー達の笑顔とあいまって、歌詞の意味がわからないまま見ていても、あたたかい気分になれます。
ティアーズ・フォー・フィアーズが発掘し、90年代初頭に"Get Here"で大ブレイクしたオリータ・アダムスも、絶品ヴォーカルで花を添えてくれていますし。


(ティアーズ・フォー・フィアーズの曲ではないのですが、このオリータ・アダムスがビリー・ジョエルの名曲「ニューヨークの想い/New York State of Mindをカバーしているのを見つけました。とても素敵に、ビリーの歌よりもずっとjazzyな感じに仕上がっていますので、ぜひぜひ聴いてみてください! https://youtu.be/tIxmkIX8F7o )


1985年リリースの、"Songs from the Big Chair"。
このアルバム、大好きでした。
40分そこそこ、と、今の若い人達が聴けば「短っ!」と驚かれそうですが。
(当時はLPレコードとCDとの端境期。なので、収録曲数を増やしたくても増やすわけにいかなかった、という技術的な事情があります。)



繊細でありながら至極パワフル、という彼らならではの持ち味が遺憾なく発揮された楽曲が次々と畳み掛けるように飛び出してきて、嵐のように去っていく。
そのスピード感が、作品の張り詰めた雰囲気にまたぴったりで、良かったんですけどね。
今ではボーナストラックが多数追加され、随分とボリュームたっぷりになったみたいです。
えっ、2枚組だって!? そりゃ、完全に別の作品だわ...。


(ま、自分で編集してオリジナルLPと同じ曲目でプレイリスト化すればいいだけのことです。便利な時代になりました。)


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ベスト版も数種類出ています。
今回は敢えて"Advice for the Young at Heart"でほんわか幸せ感を残しながら幕引きとなるこちらを推薦しときます。うちにあるのはこれ。


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YouTube動画で「試し聴き」して気に入ったら、ぜひCDかダウンロードで買ってください!カセットテープ(←レンタルしたLPからのダビング。金欠高校生だったもんで...。)しか持っていなかった私も、これを機会にまた買い直します!
【Tears for Fears ミックスリスト:
https://www.youtube.com/watch?v=u1ZvPSpLxCg&list=PLFggMdzUHXC5fL6H6u1zH9BCKDVI5inQJ 】


誰にとっても、十代は人生の方向性を決定付ける大切な時期。
極東の小国に生まれながらも、ティアーズ・フォー・フィアーズのような才能豊かなミュージシャンの音楽と一緒に時代を生きられた私は、いえ、われわれ1960年代生まれの世代は、本当に幸せでした。
心から、そう思います。



ありがとう、ローランド。
ありがとう、カート。
一度は袂を分かった二人でしたが、また一緒に音楽活動を始めてくれてうれしいです。
(ど、どうしよう!6月に、少し無理すれば行けなくもない場所に、彼らがツアーでやって来る! 行くべきか、それとももう少し近くに来てくれる日を待つべきか...悩む!!!)

☆Tears for Fears 公式HP   http://tearsforfears.com/ 
 ☆Tears for Fears 公式Facebookページhttps://www.facebook.com/TearsForFears

3 件のコメント:

  1. 詳しく書いて頂き、ありがとうございました!
    ホントもう来月は柏餅の季節です、
    年の半分がもうすぐそこに、、

    >あまりにも多くの人が 秘密の世界で暮らしてる
    >ママ役 パパ役 彼らが役柄演じている間に
    >僕らは少年少女で行くとしよう

    ○○だから、出来ないんだよ
    ○○だから、仕方ないんだよ
    っていう人が、多いな~ と感じます
    でもその言葉が口から出るということは、
    やりたくないのが本音なのかもしれません
    諦めというか、、それはこの場合、怠けになるのかな
    面倒にいつの間にか支配されて、
    したいと思うことが麻痺していくような、、
    反対に、"したい!と思うことをしている人"のことを、
    "クレイジー"と言われそう、、笑

    介護の仕事もしましたので
    年老いるということは、こうなるんだな。
    手足、脳が健康に動く時間は、案外少ないんだな~
    となんだか、身に染みたんですよ~

    そして、先日の内向型の本音。のブログに
    コメントしようと思っていたところだったんです~
    私は内向型には珍しい?!
    オープンな性格なので誰とでも話せますが
    (これは大阪出身だからかも)

    >物心ついた頃からずっと「Noと言う自由が存在しない」
    >罰ゲームのような集団生活への参加を強要されてきた、
    >と、どこかで気付いている。

    そう!そうなんです!!
    上手く人脈を広げられないことが
    コンプレックスにさえ思ったりもします。
    集団では、消耗した、、と感じて、とても疲れます。

    イギリスは、内向型に優しい国なんですね~
    訪れたことはないですが、わかります~。
    内向型、オタク型の人の勤勉さや知識量を
    リスペクトしてくれそうな気がします
    ファッションでも、
    ロンドンコレクションは
    他のコレクションと雰囲気が違いますもん。
    商業より、芸術を重きに置いている気がします
    テーラーメイドの国なのに笑

    いつも勇気を下さり、ありがとうございます!

    良い週末をお過ごし下さい♪

    返信削除
    返信
    1. T Ichiさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!本当に月日の経つのが早いです。


      >>>○○だから、出来ないんだよ
      >>>○○だから、仕方ないんだよ
      >>>っていう人が、多いな~ と感じます
      >>>でもその言葉が口から出るということは、
      >>>やりたくないのが本音なのかもしれません

      そうですよね。
      みんな、(自分も含めて、ですが)「やりたくない」というI(私)が主語の文を、「社会が嫌うワガママ者」に見られたくなくって、状況/他人/年齢...etc.のせいにすることが多過ぎます。
      元・日本サッカーナショナルチーム監督のイビチャ・オシムさんが指摘するように、「日本人は責任を回避する傾向が強い」...うなずけます。


      それにしても、どうしてこんなに挑戦も、再挑戦も、やりにくい国に
      なってしまったんでしょうかね。日本って。18歳や22歳で人生の勝ち負け決める、なんて、異常ですよ。

      (...と書いていたら、ちょうど後ろで流れていたモバイルゲームのCMで、神がかったフレーズが!

      「とりあえず卒業して
      とりあえず大学行って  彼女とか作って 
      とりあえず就職して
      とりあえず大人になるのかなーって思って
      家帰って...」

      「ただいま〜」。
      日が暮れて、親の建てた一戸建ての心地良い自室に戻り、青年はスマホゲームに逃げる。
      っていうオチ。
      このCMの脚本書いた人、すごいなぁ。)

      >>>諦めというか、、それはこの場合、怠けになるのかな
      >>>面倒にいつの間にか支配されて、
      >>>したいと思うことが麻痺していくような、、
      >>>反対に、"したい!と思うことをしている人"のことを、
      >>>"クレイジー"と言われそう、、笑

      まさにT Ichiさんがここで書かれている流れですよね。
      上の、モバイルゲームCMで自分の頭を麻痺させていく青年のつぶやきは。

      「とりあえず」を口にしつつ、
      何も考えず、流れに呑み込まれるがままになってしまった...。
      上から言われたことを無批判に受け入れ
      「それで本当にいいのか?」
      という疑問も抱かない程、腑抜けになってしまって。


      >>>介護の仕事もしましたので
      >>>年老いるということは、こうなるんだな。
      >>>手足、脳が健康に動く時間は、案外少ないんだな~
      >>>となんだか、身に染みたんですよ~

      それは何よりの生きた教科書ですね。嫌でも学ばされますよね。
      現場では、さぞやお辛い時も多かったろう、とお察しします。
      誰もが目を背けたいと望んでいる現実を直視しながらお仕事されている(された)方々、心から尊敬します。


      長くなるので別コメントに分けます。

      削除
    2. 内向型のお話、興味深いです!

      >>>私は内向型には珍しい?!
      >>>オープンな性格なので誰とでも話せますが
      >>>(これは大阪出身だからかも)

      土地柄の影響は絶対ありますよね! 
      本音トークは、確かに東京人よりも大阪人の得意技でしょう。

      あと、T Ichiさんとのこれまでのやり取りを振り返ってみるに、内向型は内向型でも、

      【感情】機能を外向型っぽく使って、他人と関わることができる

      ってことがあるんですよ。
      これは、例の16の性格分類、マイヤーズ・ブリッグズ性格タイプ指標(MBTI)の詳しい本を読むと書いてあることなんですけど。
      一番得意な直観機能は、もろ、内向型っぽい出方をするけど、もう一つのFという文字=感情が「補助機能」として働き、あまりにも内向に傾き過ぎるのを防ぐためにバランスを取って、自然と外向型のような表れ方をする...って。
      (実は私がそうなんです。初めて行った美容院とか、飛行機の座席とかで、当たり障りのない浅い話←外向感情の得意分野。を延々続けるのは、得意です。)


      例えば、外向型がデフォルトの人、特に男性なんかで、ビジネスプレゼンテーションとか、研究発表とか、図表やパネルなどを使いこなしつつ、淀みなくペラペラペ〜ラと華麗に喋れる人っていますよね?
      そういう人に、「あなたが今まで一番傷ついた失恋体験は?」なんて直撃してみましょう。
      案外、言葉に詰まってしまい、どう答えて良いかわからず、うろたえてしまう(=内向した感情がざわついて、対処しきれない)...って流れになるんじゃないでしょうか。

      誰もが自分の中に「内向型パーツ」と、「外向型パーツ」を持っていて、場面によって出したり、隠したりする、ってところが人間の面白さですよね。単純に「白!」「黒!」と割り切れない、と。
      つい、長々と書いちゃいました。すみません。


      >>>上手く人脈を広げられないことが
      >>>コンプレックスにさえ思ったりもします。
      >>>集団では、消耗した、、と感じて、とても疲れます。

      数日前、Kindle日替わりセールで「内向型人間を強みにする」という本をお手頃価格で買ったばかりです。まだ4分の1も読んでいないのですが、今のところなかなか気に入っています。
      そのうち紹介しますね! 
      「あまり自分を責めるな。嫌うな。」というメッセージが多くって、ほっとします。

      人脈っていう言葉も、過大評価されていますよね...。
      外向型の人達の考える人間関係が、手先・つま先までくまなく、多数張り巡らされている毛細血管型だとすれば、われわれ内向型人間の人間関係は動脈と静脈、じゃないでしょうか。
      太く、強く、頼もしく。
      でも、身体の奥の方を走っているから、外からは簡単に見えない...。
      それでいいんだと思います。
      毛細血管型みたいな、チョロチョロした血流なんかじゃ、満足できるわけないですよ(笑)。


      >>>イギリスは、内向型に優しい国なんですね~
      >>>訪れたことはないですが、わかります~。
      >>>内向型、オタク型の人の勤勉さや知識量を
      >>>リスペクトしてくれそうな気がします
      >>>ファッションでも、
      >>>ロンドンコレクションは
      >>>他のコレクションと雰囲気が違いますもん。
      >>>商業より、芸術を重きに置いている気がします
      >>>テーラーメイドの国なのに笑

      ファッションの傾向でもやっぱりわかりますかー。
      いや、面白いです。その国の文化って、ファッションや、音楽や、映画...そういったところにありありと特色がにじみ出るものなんですね。
      (食べ物に関しては、全然芸術的じゃないところがまた笑えたりして。不器用なんだよなー。)

      なんたって、60年代のビートルズやストーンズ、70年代のパンクロックを生んだ国ですもんね。
      「テーラーメイドの国なのに」。
      ここ、なんですよ。
      テーラーメイドって、つまりは伝統文化や、階級社会の上位に位置する支配層といった、ぶっ壊したくなるような高く、分厚く立ちはだかる壁ともなり得ますよね?
      でも、そうした手強い壁があったにもかかわらず、自分達の生きやすい世の中を求めて、反逆することを諦めなかった人々がいた。
      壁をぶち壊すエネルギーを、若者達が失わなかった。
      それが、20世紀後半のイギリスから面白い人々がたくさん出てきた一番の理由でしょう。

      今回取り上げたティアーズ・フォー・フィアーズなんて、徹頭徹尾内向型って感じの歌詞ばっかり書いてますもん。
      二人とも、親が離婚した崩壊家庭の子どもたち。
      グレかけたり、心病みかけたりした中で、心理療法の本や音楽に救いを求めた早熟な二人の少年達が、思いのたけを歌に全部ぶちまけた、っていう...そういうミュージシャンなんですよね。
      彼らの公式Facebookや、YouTube動画のコメント欄を読むと、「彼らの音楽だけが、十代の私を本当に理解してくれる親友のような存在だった」といった類の書き込み、次から次へと出てきます。「同じ部族の人、ハッケーン!」って感じで、読んでいてこっちも元気もらえるんですよ。じわじわと湧いてくる、仲間意識のおかげかな。


      そうした「同じ部族の人、発見!」の喜び。
      内向型人間には絶対必要ですよね。
      だから、私は最近80年代音楽を狂ったようにガンガン聴きまくって、色々な人のコメントや感想を読んでは、「あー、ここにも仲間が〜。」と、勝手に幸せな気分になっています。
      国や言葉や地域に関係なく「魂の仲間と呼べる人々」の存在を知ることができるようになったのは、インターネットのおかげです。素晴らしいことだと思います。

      いやはや、またもや長くなりました。
      それでは、またの機会にお話ししましょう。T Ichiさんも、充実の春をお過ごしくださいね。

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